心不全のマーカーとしてBNPとNT-proBNPがあります。共に心不全に関するマーカーで慢性心不全の重症度およびその経過を把握する指標、心不全や心肥大に対する薬剤による治療効果の確認と判定、急性心筋梗塞後の左室リモデリングの指標、健診時の疾患スクリーニング検査として有用です。
心不全におけるBNPとNT-proBNP
日本循環器病学会の心不全治療ガイドラインによるとBNP:100pg/ml以上、NT-proBNP:400pg/mL以上で心不全を強く疑うこととされている
心不全の予後としてのBNPとNT-proBNP
心不全患者はBNP:200pg/ml以上、NT-proBNP:900pg/mL以上あれば治療を行っていくことが推奨されている。
外来通院中のBNP値が190pg/ml以上で心事故が増加し、また心筋梗塞発症後一か月後の採血でBNP値が180pg/ml以上あると心臓死が増加するとの報告がある
検診でのBNPとNT-proBNP
検診時においてNT-proBNPが55pg/mLを超えると全身血管イベントが発生する確率が高まります。このためBNPやNT-proBNPは心疾患だけでなく脳梗塞なども予測できます
BNPとNT-proBNPの違い
BNPは(脳性ナトリウム利尿ペプチド;brain natriuretic peptide)の略で、心臓(主に心室)で合成され分泌されるアミノ酸32個よりなるホルモンです。一方でNT-proBNPは、BNPの前駆体proBNPのN末端フラグメントです。
※引用 小原俊子ら心不全マーカーBNP とNT-proBNP との比較検討
BNPとNT-proBNPの臨床的意義は同じで相関性は良好ですがそれぞれ検体の採取法が異なります。NT-proBNP、BNPを同時に測定してもどちらか一つの検査項目に対しての件数しか算定できません。
※ BNPとNT-proBNPの比較
BNP
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NT-proBNP
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検体
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血漿
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血清・血漿
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半減期
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20分
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120分
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安定性
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4時間
時間と温度に影響される
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72時間(3日)
高い
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溶血の影響
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有
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無
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基準値
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基準値:18.4pg/ml以下
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125pg/mL以下
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測定試薬
(メーカー)
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・LSIメデイエンス
・積水
・協和メデイックス
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・ロシュ
・シスメックス
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点数
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136点
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140点
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安定性はBNPとNT-proBNP比べた場合BNPは測定までの時間や温度の影響を受けやすい一方でNT-proBNPの方が良好で、検体として血清を使用できる点から追加検査はし易いです。またNT-proBNPはBNPより病変を反映しやすいが、腎機能の影響も受けやすいとされます。
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