糖尿病患者に対するCVRR測定と結果解釈方法

2021年4月8日木曜日

生理検査

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糖尿病の症状と神経障害

糖尿病は高血糖が続く病気でといった多彩な症状が認められます。

糖尿病の症状として

・疲労感

・易感染性

・頻尿

・性欲低下(ED

・傷の治りにくさ

・多飲多尿

その中でも特に神経症状、網膜症、腎障害などの3台合併症が有名です。

高血糖の恐ろしいことは少し血糖値が高くても症状が全くでないことです。少しずつ体の中の血管や神経は少しずつ損なわれ続け、その結果として、様々な障害が現れて来ます。

糖尿病神経障害

糖尿病3台合併症の一つである糖尿病神経障害は糖尿病に特有な3大合併症のひとつです。

糖尿病神経障害は最も早期に発症し,最も頻度が高く。糖尿病性自律神経障害は,慢性の高血糖により生じる全身の臓器を司る交感神経,副交感神経線維の障害により,多彩な兆候や症状を呈すると同時に心血管自律神経障害を有する患者の突然死のリスクが高いことが報告されています。

糖尿病神経障害の検査

糖尿病神経障害における自律神経障害の評価には、バルサルバ試験やシェロング試験等が用いられますが、心電図の他に呼気圧調整や血圧測定が必要となるなど手技が煩雑です。


これに対しCVR-Rは、同障害を有する患者で安静時と深呼吸時の差が健常者と比較して低くなる特徴があることに加え、評価が心電計のみで実施可能と簡便とされます。

CVR-Rとは

CVR-CoefficientofvariationofRR-RintervalR-R間隔変動の時間領域解析法(time-domain)として国内では最も汎用されている簡便法です。心拍数は、自律神経の働きによって調節され呼吸により心拍数が変動します。この心拍数の変動の程度を調べることにより、自律神経の状態を調べることができます。心電図波形のR波の間隔を用いて、その変動係数(CV)を求めて評価することから、CVR-Rと呼ばれています

 CVR-R検査方法


1)安静仰臥位にて連続100心拍の心周期(心電図のR波の頂点の間隔)を計測する

2)変動係数(CVR-R:%)を求める

安静時および深呼吸時に,心電図を記録して,連続した100心拍のR-R間隔の平均値と標準偏差(SD)を算出して,変動係数(CVR-R)=標準偏差/平均値×100%)で求める

CVR-R検査 基準値

CVR-R値は加齢による変化を呈するので評価に当たっては年齢階層ごとの基準値が必要です

 

年齢とCV変動下限値

年齢()

安静時

深吸気時

20-29

2.46

4.38

30-39

2.13

4.2

40-49

1.66

2.82

50-59

1.41

2.43

60-69

1.25

2.24

70-79

1.14

1.71

  

年齢

安静時

SD(mean)

安静時

SD(lowerlimit)

安静時

CV(mean)

安静時

CV(lowerlimit)

59

54.8

19.6

7.3

3.6

1019

52.1

20.8

5.7

3.0

2029

46.0

17.7

4.9

2.5

3039

34.5

16.2

4.0

2.1

4049

28.4

12.8

3.2

1.7

5059

24.6

11.6

2.8

1.4

6069

24.1

10.3

2.7

1.3

7079

20.2

8.8

2.4

1.1

 CVR-R検査結果解釈

・年齢別の安静時CV(lowerlimit)より低値であれば、神経障害が疑われる

・健常人でも加齢に伴い,CVR-Rは低下するが,安静時において20%未満であれば心自律神経障害の存在が考えられる。

 ・適応:糖尿病などの末梢神経障害。

・不適応:不整脈(特にAf,aF)など。

 年齢ごとの変動下限値を下回ると、自律神経障害が疑われる

<各神経疾患でのCVRR値(参考)>

・テント上脳血管障害:2.0%

2DMParkinson:1.8%

・脊髄小脳変性症:1.7%

Wallenberg症候群:1.3%

Shy-Drager症候群:0.9%

CVR-R検査検査は保険点数の算定対象ではありませんでので注意が必要です

参考と出典

・健常値、検査方法などは下記の文献を参照してください。

心電図R-R間隔の変動を用いた自律神経機能検査の正常参考値および標準予測式。糖尿病302(1987)167-173

2型糖尿病における心拍変動の臨床的意義-簡易心拍変動(CVRR)測定法を用いた検討-香川県医師会誌2013;56:42

心電図R-R間隔の変動と自律神経系-中枢神経疾患への応用を中心に-。神経内科1983;19:127-132

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