検査室の運営方式 自主運営・FMS・ブランチラボの違いとメリットデメリット

2021年8月8日日曜日

マネージメント 遺伝子検査 一般検査 血液学的検査 情報 生化・免疫学検査 微生物検査 病理・細胞診 輸血検査

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検査室運営を考えるその背景


コスト削減のためのアウトソーシングはどの業界でも進んでいます

医療現場でも人件費抑制のために急速に導入されつつあり

平成4年の医療法改正により医療に直接影響を与える8業務での規制が緩和されて以降、さらに加速されています。

検体検査室のアウトソーシングの方式



検体検査室の運営方式として自主運営方式、外部委託方式、FMS方式、ブランチラボといった運営形態があります。

自主運営方式

検査に使用する機器試薬、スタッフなど検査に関するすべてを自前で調達する方式です

外部委託方式

検査室運営における外部委託方式は、殆どすべての検体検査項目を外部委託する方式です

外部委託方式のメリット

・検査部門のスペースが不要となる。

・利益の上がらない検査についても、外注単価は保健点数より低額となることが基本なので赤字にはならない。

・検体検査部門の検査技師が不要であり、人件費の削減と労務管理の軽減が図られる。

外部委託方式のデメリット

・院内検査に比べ検査結果の返却に時間がかかる。院内検査は少なくとも1時間以内に結果が返せるが(目標40分)、外注だと1日以上の遅れが出てくる。

・微量検体の扱いが困難となるため、小児等採血困難な場合、検査が不可能となる。

・検査データの蓄積が行えないため経過を追って診療するような慢性疾患患者に適切な治療が行えない。

・検査データの信頼性を確保するため、精度管理のための特別対策が必要となる。

・院内に検査技術が蓄積されない。

FMS方式(Facillity Management System)

FMS方式は検査センターなどの関係会社が検査機器や試薬や帳票類を提供します

検査実施料に応じて診療報酬を分配する方式、検査件数の単価と件数から病院側が支払う方式です。

機器・試薬は自前ではありませんが、職員は施設側が揃える必要があり、要はリース契約です。

車の残価設定プランの様に分析装置を検査センターから購入して、数年後に残価を支払う形式もあるようです。

FMSのメリット

・検査システムの導入、検査機器の導入、更新等の初期投資の軽減。

・機器を熟知した業者が維持管理の責任を持つので最小限のコストで最良の稼働状態を維持できる。また、業者は複数施設と契約することによりスケールメリットが生じ、料金が低廉化される。

・技師が全員病院職員のため部門間の雇用格差がなくスムーズな業務連携ができる。

FMSデメリット

・業者への料金自体が膨大な固定費であり、将来の医療経済や金利の変動に臨機応変に対応できない。

・機器や試薬が経済性を優先して選択されるため、業務の内容が制約されるとともに、検査サービスの質の確保が新たな業務となる。

・最大経費である人件費の軽減にならない。

・技術革新に対応した最新の技術を採用しにくく、研究的な業務は困難である。

ブランチラボ

ブランチラボは検査センターや派遣会社から検体検査スタッフが派遣される方式です。

また機械や試薬なども検査センターから持ち込まれます。

人件費を抑えるのがメリットですし、派遣先からピンハネされますので

病院採用職員よりかブランチラボで派遣される技師の給料のほうが低く抑えられています。

また機械や試薬も検査センターから調達します

要するにブランチラボは業務委託で、当該業務を業者に丸投げしても差し支えない場合といった意味合いです

検査室スタッフの質が悪くブランチラボに切り替えて事例も聞いたことがあります

確かに何もできなく、間違いが多く、ネットばかりしてて働かないジジイババアは早くクビにしてほしいですもんね

ブランチラボのメリット

・検体検査人員の削減が可能で、最大のコストである人件費が削減でき、収益の安定確保につながる。

・病院とすると労務管理から解放される。

ブランチラボのデメリット

・院内に2種類の検査技師集団が存在し業務の連携が難しい。つまり、受託者の職員は受託会社の指示で業務を行うものであり、病院が直接指示をすることができない。

・検体検査部門の業務を行わないため、検査部としての技術水準の維持が困難になる。

・臨床診療部門との連携をはじめとしたチーム医療への検査の参加が困難になる。

ブランチラボとFMSの違い

ブランチラボとFMSの違いですが、FMSは機器試薬だが外部調達です。

ブランチラボはFMS+人員も外部調達方式です。つまり検体検査に関するほぼすべて(人・機器・試薬・システムなど)を外部調達する方式です

検査室が自主運営をやめた場合の注意点

検査室の運営上問題となることが、自主運営の場合は検体管理加算が算定できますが、

FMSやブランチラボの場合は検体管理加算が算定できません

ブランチラボの場合、あくまでも検体検査の技師が派遣されて行ってきます。

主に生化学、免疫、血液、細菌検査を担当しますが輸血検査、生理検査は担当しません。

業務請負であるから、病院検査室側に指揮・監督・命令権がありません。

このため各種委員会や、当直、指示といった指揮系統が異なりますので注意が必要です

さらに待遇の差によるモチベーションの低下も生じやすいようです。

また2018年の医療法の改正によりSOPなどの作製は必務となりますので移行される際は書類作成頑張ってください

検査室がFMSやブランチラボから自主運営に切り替えた事例

人件費などにより収益が悪化したにFMSやブランチラボに移行する事例もあります

FMSやブランチラボ移行に際して第三者からの提案やコンサルティングは入ります

調査後センター側、病院側がwin winとなるようなラインの提案はしてきます


実際に自分の経験では話が来てからセンター側との説明後に調査が入り、

・収支/業務分析(検査室運営状況を多角的に分析)と収益改善の提案

・現状の課題を抽出し損益改善に向けた解決策を提案されました

・専門担当者がお伺いし、一日の検査業務の流れを確認した上で数値では見えない運営課題を洗い出し解決策の提案

がありました


実際の提案があった経験でも検体検査の人員が削減され、退職されるか生理検査の人員を増やす事例が多いようです

生理検査は今の所ブランチラボにはなりませんし、エコーが出来る人手が足りていないようです


また病理検査に関しては大規模施設では病理医がいて診療に影響する点、がん拠点病院では細胞検査士が必要なため

ブランチラボにはなりにくいような気がします


またFMSやブランチラボから自主運営に切り替える施設も存在します。

この場合の理由としては収益の向上や、検体管理加算を施設側が取りに行く場合は自主運営に切り替えます

さいごに



検査室の運営方式の違いを紹介しました。どの運営方式であろうとも、患者様の治療のために必要なデータを提供するということは変わりません

そのためのサービスを提供している事も忘れてはいけません

FMSやブランチラボの話が検査室に来た場合を乗り切るには、まずは検査室の自助努力、病院管理部門の認識改善が必要です。

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