直接クームスと間接クームスの違い
ざっくり言うと直接クームスは赤血球に結合した抗体の有無を確認するために行い
間接クームス試験は血液中に不規則抗体が無いかを確認するために用いられる検査方法であらかじめO型血球と患者血清を反応させてそのあとクームス血清を反応させる。
一方で直接クームス法は赤血球とクームス血清を反応させて赤血球と反応すれば
凝集が生じることで直接クームス試験陽性となる。
直接クームス試験は赤血球の細胞膜に結合している免疫グロブリン(抗体)が
存在しているか否かを調べる事から検査法の事で自己免疫性溶血性貧血,
各種膠原病に伴う溶血性貧血,薬剤(ペニシリン,メチルドーパなど)による溶血性貧血,
発作性寒冷血色素尿症,寒冷凝集素症,において陽性となる事で診断の一助となるため臨床上有用な検査法の一つである
(過去記事 https://rinsyoukensa.blogspot.jp/2017/08/blog-post_15.htmlより)
従来直接クームス法では寒冷凝集素下では、寒冷凝集素が赤血球にC4やC4dを結合させ,クームス血清がC4抗体と反応することで偽陽性を起こすことが知られている
近年直接クームス試験において偽陽性を呈するケースが報告されています
多発性骨髄腫治療薬(抗CD38抗体)によって直接クームス試験が陽性となる
日本輸血・細胞治療学会日本輸血・細胞治療学会輸血検査技術講習委員会によると
多発性骨髄腫治療薬(抗CD38抗体)によって直接クームス試験が陽性となる
事例が報告されている
“引用 多発性骨髄腫治療薬(抗CD38)による偽陽性反応への対処法 ”
CD38は骨骨髄腫細胞に著しく発現されており,抗CD38抗体治療薬は
期待されているのだが赤血球にも発現されているため、抗CD38抗体を投与された
患者は不規則抗体スクリーニングや直接クームス試験において偽陽性を呈し
その強度は様々である。
抗CD38治療薬がもたらす影響として,患者が抗CD38 CD投与されていることに
輸血部門が気づかなった場合、異常反応の問題解決に時間を費やし赤血球製剤の出庫に
遅れをきたすことが予想される
抗CD38抗体治療薬の種類
抗CD38ヒト型モノクローナル抗体薬は直接抗腫瘍効果に加えて免疫系活性を介し抗腫瘍効果を示します
薬剤名 |
企業 |
|
適応 |
ダラザレックス |
ヤンセン |
|
多発性骨髄腫 |
ダラキューロ |
ヤンセン |
|
多発性骨髄腫 |
サークリサ |
サノフィ |
|
多発性骨髄腫 |
抗CD38抗体による輸血への干渉の回避方法
抗CD38抗体は輸血検査、特に間接クームス試験への干渉が認められます(血液型には影響はない)。干渉を回避するためにはジチオスレイトール処理を行う必要で検査方法としてはAABB 法と大阪法があます。
AABB 法と大阪法での DTT 処理血球作製法の比較
|
AABB
法 |
大阪法 |
DTT 作製 PBS ph |
pH
8.0 |
pH
7.3 |
DTT 濃度 |
0.2mol/l |
0.01mol/l |
赤血球試薬量 |
8 滴(約 400μl) 赤血球 1 容 |
2 滴(約 100μl) |
洗浄操作 |
手洗浄 |
自動血球洗浄遠心機 |
DTT 試薬添加量 |
1 滴(約 50μl) DTT 4 容 |
1 滴(約 50μl) |
インキュベート |
37℃ 20 ~ 30 分 |
37℃ 30 分 |
使用時 |
3 ~ 5% に調製後使用 |
そのまま使用 |
検査終了までの所要時間 |
約
2 時間 |
1 時間以内 |
大阪法(0.01mol/l DTT 使用)による DTT 処理血球作製方法
1.pH7.3 PBS を用いて 0.01mol/l DTT を作製
2.3 ~ 5% 赤血球浮遊液 2 滴(約
100μl)を生理食塩液で 3 回洗浄(自動血球洗浄遠心機を使用)
3.0.01mol/l DTT 溶液 1 滴(約 50μl)を添加
4.37℃,30 分間加温
5.生理食塩液で 3 回洗浄(自動血球洗浄遠心機を使用)
6.pack cell を DTT 処理赤血球として使用
※細川 美香 大阪法によるダラツムマブ干渉の解消例:他院での治療歴入手に苦慮した
骨髄腫症例 より引用
DTT試薬の入手方法
自身が勤務する施設では急にDTT投与している患者が転院してきて、自己対照陽性となりカルテを調べてCD38抗体薬が投与されていることに気づいたためDTT試薬を緊急発注しました。血液疾患を有する患者で、急に自己対照陽性となった際はカルテ確認、薬剤の確認を行ったほうが良いでしょう。DTT試薬はオーソとバイオラッドから製造販売されており、オーソのほうが価格は安価でした。近隣施設で普及しているものを選べばよいと思います。また小分けして凍結保存が可能でした。またDTT処理血球を用いてカラム法を行わないほうが良かったです。血球処理後に不規則抗体同定と必要に応じたクロスマッチを行いますので結構時間がとられるのが難点かと思われました。
さいごに
ここ最近知った事なので勉強がてら記事にさせていただきました。抗CD38抗体に関わらず近年抗体薬が多数販売されていることから今後もこの様な偽陽性反応は増えていくものと考えられます。
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