検査試薬管理台帳と試薬管理ソフトの考え方とおススメ

2021年3月13日土曜日

マネージメント 遺伝子検査 一般検査 血液学的検査 検査システム

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医療法改正で試薬管理台帳の管理が負担になった

2018年12月の医療法改正では標準作業手順書などの書類が必要となりました
特に試薬管理台帳が個人的には一番めんどくさかったです
友人に聞いてもこれが一番めんどくさく負担となっているとのことでした
管理方法を今でも模索されている方は多いです

2018年の医療法改正で必要となったもののおさらい

まずは今更な感じですが医療法改正で必要となったものを下記に示します

1.標準作業書

「検査機器保守管理標準作業書」「測定標準作業書」の策定が義務化され
医療機器の添付文書、 取扱説明書等をもって検査機器保守管理標準作業書とすることも認められます
また測定標準作業書は、検査項目ごとに以下の事項について、可能な限り多くのものを盛り込むことが望ましいとされます
・ 性能特性(測定感度、測定内変動等)
・ 検査室の環境条件
・ 検査材料(検体量、採取条件等)
・ 試薬、機器、器具及び消耗品
・ 管理試料及び標準物質の取扱方法
・ 検査の変動要因
・ 測定上の注意事項
・ 異常値を示した検体の取扱方法
・ 精度管理の方法及び評価基準
・ 参考文献等

2.作業日誌

 検査機器保守管理作業日誌に保守管理を行う担当者が記入すべき事項を下記にし
・ 点検日時及び点検実施者名
・ 各検査機器における保守管理上確認すべき内容
・ 上記確認すべき事項について特に付記すべき内容
・ 業者による定期保守点検を受けた場合は、その作業内容、点検を行った業者名等

3.台帳

「検査機器保守管理作業日誌」、
「測定作業日誌」
「試薬管理台帳」
「統計学的精度管理台帳(内部精度管理台帳)」
「外部精度管理台帳」

4.外部精度管理調査の受検

各種団体が定期的に実施するう外部精度管理調査を受けるよう努めること
・公益社団法人日本医師会
・一般社団法人日本臨床衛生検査技師会
・一般社団法人日本衛生検査所協会

5.適切な研修の実施

研修は検体検査の業務を適切に行うために必要な知識及び技能を修得することを目的とし、次に掲げる事項を含むものとし、内部研修に留まることなく、
都道府県、保健所設置市、特別区又は学術団体等が行う研修会、報告会又は学会など外部の教育研修の機会も活用するよう努めること。
※そもそも研修を受けさせないのは”パワハラ”な気がしますが・・・

試薬管理台帳作成方法

医療法改正までに標準作業手順書の整備が大変でしたが、
それ以降最も大変であったのは試薬管理台帳の管理運用であると思います
これまでは問屋からの納品検品発注だけでよかったのですが、試薬納品時や使用時にロット管理が必要となったわけで法改正で一番めんどくさくなったと感じております
試薬管理台帳作成方法は
・手書きによる管理
・SPD
・物品管理ソフト
この方法があります

手書きによる検査試薬管理

手書きによる検査試薬管理が最も簡単かつ低コストで作成できて速やかに医療法改正に対応できます
ワードかエクセルでテンプレートを作製すればよいだけですし、標準作業手順書のひな型と同様に各地域の技師会がテンプレートを公開しておりますので、それをインストールして使用すればよいと思います

ネット上で見つかったものを引用してみました






注意すべき点として割り当て方法が問題となります
試薬1つに対して台帳一枚を割り当てた場合、検査室での試薬取扱品目が500品目あった場合台帳が500枚必要となります
納品時と使用時に綴っているファイルからそのページを探して記載するという手間が発生します
小規模、人数の少ない施設でも250品目程度は試薬がありますので確実に管理不備が生じやすくなります
そう考えるとISO認定取得施設では発注はSPDで管理は手書きですので、その努力は恐れ多い限りです

SPDによる検査試薬管理


SPDは今更設営不要かと思いますが、SPDカードを投函すると数日後に試薬が納品される方法です
問屋さんは試薬消耗品のLOTを控えているため、定期的に試薬管理台帳をPDF形式で出力してもらえば医療法には対応できます
SPD運用を取っている施設では、この形式を採用している場合が多いです
SPDの場合、
・注文日=試薬使用開始日(開封日)
・納品日=購入日
となるのは知っておく必要があります
ロットの記録の周知教育、手書きの手間や、試薬管理ソフトの管理の手間の負担は一切なく試薬消耗品史上最も楽かつ効果手的な手法ですが、欠点も結構あります
・リアルタイムで在庫数(金額)を把握できない
・在庫定数の設定を検査室側で設定するタイミングを得にくい
・SPDカードの紛失による欠品
SPDカードの紛失は結構多く、問屋さんにご迷惑をおかけする事がしばしばります。
また検査科の管理責任者が経営能力に乏しい場合、在庫数が多いままで過剰在庫を抱えたままダラダラと経過する場合がありますので、
定数の設定など定期的に提案してくれるか否かSPD会社の方と一度話をしておくと良いでしょうし、今後SPDに切り替える予定がある場合も医療法における試薬管理台帳の対応も確認すべきです

物品管理ソフトによる検査試薬管理

SPDが導入されていない施設では、基本的に手書きによる管理を自動的に選択せざるを得ない状況になります。
ISO15189認定取得施設でない限りははっきり言って試薬管理は業務負担でしかありません
物品管理ソフトがあれば仕事が楽になる思うのは必然です
物品管理ソフトは
・システム会社の試薬管理ソフト
・フリーの試薬管理ソフト
・検査システムの試薬管理ソフト
”法律が変わったからソフトを買ってくれ”と言って書てくれる施設はまずないでしょう
施設がソフトを購入してくれない場合は、電カル・検査システム更新の時に”物品管理ソフト”を仕様にに入れておけば問題ないです
つまり更新時までは我慢する必要があります
このため電カル更新まではフリーソフトの活用かエクセルかアクセス、ファイルメーカーで試薬管理ソフトを自作する方法しかありません
フリーの試薬管理ソフトもネット上で無償で配布している方がおります

フリーの試薬管理ソフトおすすめ

ファイルメーカでの試薬管理ソフト

ファイルメーカーでノウハウ共有 @ File Maker System laboratoryというサイトよりファイルメーカでの試薬管理ソフトが入手可能です
https://ameblo.jp/yamafmslab/

臨床検査室業務における試薬管理システムの開発と無償配布経験
山下史哲 著 · 2020 —
www.jstage.jst.go.jp › article › jamt › _html › -char
にその有用性と実績は記載されております

ブログにアクセスしてソフトを手配していただくようでがVECTORよりインストールも可能でした

臨床検査室の試薬管理業務ができる!FMP18シリーズ
https://www.vector.co.jp/soft/winnt/business/se521878.html?_ga=2.182997734.1131103701.1615617073-1991134471.1581941928

ソフト詳細説明

【このシステムを使用するには、FileMakerPro18以上が必要です】
FileMakerPro18がない場合はランタイム版をご使用ください。
試薬の入庫・使用期限・ロット・開封日・開封時間の記録台帳を作成できます。在庫管理も可能。入庫・出庫作業はすべてバーコード管理で行うことができます。
試薬包装のJANコード、GS1-128等を読取り入庫作業を行い、試薬の出庫最小単位毎にバーコードラベルを発行し、開封時にそれを読み込ませ出庫処理とします。出力するバーコードはcode39で設定してあります。
バーコード印字に関しては株式会社テクニカル 様の無料バーコードフォントを使用しており、本システムではcode39を使用しています。詳細はhttps://www.technical.jp/barcode/font/
試薬管理システムのカスタマイズは受け付けておりません。
zip形式で圧縮してありますので解凍後、フォルダ内の「試薬管理」ファイルを開いてください。
ご使用前に同フォルダ内に格納してある「code39」ファイルを開いてバーコードフォントをインストールしてください。
ご質問に関する回答は下記のブログにて公開させて頂く方針です。

動作環境
ソフト名: 試薬管理システム
動作OS: Windows 10
機種: x64
種類: フリーソフト
作者: 山下 史哲 

その他にもVECTORを探すと何個か出てきましたので引用紹介させていただきます

生化学検査試薬などの統合型多機能管理発注マクロ

https://www.vector.co.jp/soft/win95/business/se168805.html?_ga=2.149970934.1131103701.1615617073-1991134471.1581941928

ソフト詳細説明

生化学検査試薬などの問屋発注品目に関して、「入・出庫管理」「発注書印刷」「試薬消費金額グラフ表示」などができます。
最大の特徴は「バーコード管理」ができるところであり、「ピッピッ」と、入・出庫ができます。
バーコードの無い施設でも対応しております
ソフト名: 試薬管理ツール
動作OS: Windows Me/2000/98/95
機種: 汎用
種類: フリーソフト
作者: 松本 誠治 

試薬管理アプリケーション Stockroom

https://www.vector.co.jp/soft/win95/edu/se396821.html?_ga=2.141588210.1131103701.1615617073-1991134471.1581941928

ソフト詳細説明

Stockroomは研究室で使用する試薬の在庫管理・使用記録を行うアプリケーションです。
バーコードリーダーとラベルプリンターを用意すれば,かなり高度な試薬管理が可能になります。基本的に次の2つの作業を管理することができます。
1.保有試薬管理
・バーコード発行・印字による簡単試薬管理
・バーコード印字は,ラベルプリンターとラベルシート双方に対応
・試薬メーカーの試薬名,試薬番号,CAS番号入力による検索
・WEBによるメーカーカタログページからの検索
・毒劇法指定物等の主要な試薬は名称から自動判別
・CAS番号に基づいた試薬管理のため,試薬名称の違いによる管理ミスが起こりにくい
・登録した個々の試薬情報(残量,履歴など)を一発検索
2.試薬使用記録
・RS-232C接続に対応した電子天秤を使用すると,ボタン一つで秤量値の取り込みが可能
・試薬種類や使用者による履歴検索
・各種法規に準じた履歴表の作成・印字
・履歴表のExcelファイルへの出力
3.その他
・データベースバックアップ
・任意バーコードの作成・印字
・管理者名,使用者名などの登録
ソフト名: 試薬管理アプリケーション Stockroom
動作OS: Windows XP/Me/2000/NT/98
機種: IBM-PC
種類: シェアウェア
作者: MMK Factory 

SpecimenReagent 検体検査試薬品在庫管理

https://www.vector.co.jp/soft/winnt/business/se281800.html?_ga=2.138508403.1131103701.1615617073-1991134471.1581941928

ソフト詳細説明

SpecimenReagentは MedicalUseの試薬品管理 に絞ったバージョンです
ひとつの機能に絞ることで、試薬品データを含んで配布し、直ぐに利用できるようにしました
当該検査施設の検査試薬への差し替えは以下のURLを参考にしてください
https://medicaluse.hatenablog.jp/entry/20201005/1601870193
実行時にMicrosoft Visual C++ 2010 再頒布可能パッケージが必要です
https://syskobo.hatenablog.com/entry/20200614/1592094202
動作環境
ソフト名: SpecimenReagent 検体検査試薬品在庫管理
動作OS: Windows 10
機種: IBM-PC
種類: フリーソフト
作者: システム巧房 

個人的にもっともよいと思うフリーの試薬管理ソフトは論文投稿などもあるため”臨床検査室の試薬管理業務ができる!FMP18シリーズ”が試薬管理のフリーソフトとしてはお勧です

フリーの試薬管理ソフトを使用する際の注意点

フリーの試薬管理ソフトを使用する際の注意点ですが、一番問題となるのはセキュリテイも問題です。フリーソフトですので病院のシステム規約に該当し、システム担当者や事務部門から止められる可能性があります。
もしかしたら病院ではインストール自体が不可能なばあがあります。
またフリーソフトを検査システム内のネットワークに組み込んめ場合、ラベルプリンタの設定を行います。この場合検査システムとの相乗りとなります
万が一検査システムに影響を及ぼした場合、診療に影響が出たりシステムの修理費用が発生しますので本末転倒となります
実際に自分は検査システム会社の営業から使用しないよう言われました
このためフリーソフトは検査システムや電子カルテ・検査システムのネットワークに入れないほうが良いですが、この場合、別の端末で処理を行わねばならず記録する手間は軽減されますが、完全とは言えません
面倒かもしれませんが院内ネットワークでエクセルなどのソフトで作成したほうが良いです

試薬管理ソフトを作製する際の注意点

試薬管理ソフトを作製する際の注意点ですが、医療法では試薬管理台帳に記入すべき事項としては
・ 試薬の有効期限
・ 試薬のLOT
・ 使用者
は要求されますので、これらの記録は必須です

マスタとしては
・商品マスタ
・ユーザーマスタ
は最低限必要となり、運用と設計は施設で話あってまとめておけば問題ないです
試薬管理ソフトを自作した場合、ローテーションや人の移動などで管理できなく可能性があるため極力簡素化したほうが良いです
また試薬消耗品にはGS128コードが記載されています
GS128コードには

・商品コード
・有効期限
・ロット
・入り数
が記載されています
バーコードリーダーでコードで読ませた際にこれを分解する必要があります

商品によってはGS128コードに記載される商品コードとJANコードが異なっていたりもしますので取扱商品を一度確認しておいたほうが良いです
海外の製品でJANがない商品もありますので、スーパーのレジみたいにJANコード(商品コード)リストを作成しておくのも一つの手段です
自作した場合最も使いやすくいつでもせてい可能ですが、人の入れ替わりによっては管理できなくなる可能性だけは覚悟しておいたほうが良いです
あくまでも試薬管理ソフトが入るまでのつなぎ的位置づけにしたほうが良いです

さいごに

医療法改正による試薬管理方法をまとめてみました。法律が変わってまだ年数も浅くどの施設も模索されている段階だとは思います。
省力化のためにはSPDか試薬管理ソフトの導入が最も効果的であると考えております
ペーパーレス化にもなりますので、今後は何かしらの購入した試薬管理ソフトを用いるのがスタンダードになるとも考えています。
面白い運用方法などがありましたら、是非ともコメントしていただけると幸いです

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