抗体と抗原抗体反応とは
生体内に侵入した細菌やウイルスといった病原体から体を守るために抗体が作られます。
仮に体内に異物や病原体(抗原)が侵入した場合に抗体と抗原との特異的な結合により抗原は抗体と結合して凝集し,また可溶性抗原は抗体と結合することにより不溶性になり沈降します。これを抗原抗体反応と言い、抗原抗体反応により病原体は生物活性を失います。
抗原抗体反応は試験管内でも容易に再現できるため、この性質を利用し抗原やたんぱく質、抗体の定量的・定性的な試験方法や治療薬が開発さておりモノクローナル抗体やポリクローナル抗体が使用されています。
モノクローナル抗体の特徴と用途
抗原内の特定の抗原決定基とだけ結合する抗体を、人工的にクローンを増殖させたものをモノクローナル抗体といいます。モノクローナル抗体は主に分子標的薬など、がん細胞の特定の抗原に結合する薬などに利用されています。
モノクローナル抗体の作成方法
モノクローナル抗体は、Bリンパ球と不死化した培養細胞とのハイブリドーマを形成させることによって作成します。全く同じ抗体のコピーを多数産生します。モノクローナル抗体は抗原の1つのエピトープと反応するため、診断を目的とした抗体の開発に役立ちます。
ポリクローナル抗体の特徴と用途
ポリクローナル抗体は抗原の多様なエピトープを認識することができるため、一部の実験手技では有用です。動物に免疫させ作成し、ウサギ、ヤギ、などの様々な動物種で産生することができるため、実験デザインの選択肢が多い傾向にあります。
モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の違い
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モノクローナル抗体 |
ポリクローナル抗体 |
由来 |
免疫されたマウス、ラット、ウサギの正常抗体産生細胞と骨髄腫細胞のハイブリドーマ |
異種動物(ウサギ、ヤギ、ヒツジ)に抗原を免疫させて得られた抗血清 |
クラス・サブクラス |
均一 |
異なる抗体が混在 |
特異性 |
抗原分子上に存在する一つの抗原決定基のみに反応する |
抗原決定基上に存在する複数の抗原決定機に反応する |
交差反応 |
通常無い。 |
共通部分のある分子とは部分的に交差する |
再現性 |
永久に同一の抗体が得られる |
免疫動物ごとに多少の差 (ロット差)が生じる |
抗体濃度 |
培養上清は低い |
比較的高い |
モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の選択方法
ポリクローナル抗体は複数のエピトープを認識することが多いため、モノクローナル抗体よりも抗原の性質の小さな変化に寛容で変性タンパク質の検出には、ポリクローナル抗体が選択されることが多いです。特にポリクローナル抗体は複数のエピトープを標的とするため、一般的に検出力が高く、免疫原とは異なる種の組織サンプルにおける標的タンパク質のスクリーニングに用いることができます。ポリクローナル抗体を用いる場合に注意すべき点として、ポリクローナル抗体の産生に用いられた免疫原や、解析するサンプル中で起こり得る望ましくない交差反応性について、可能な限り多くの情報を得ることが重要となります。一方でモノクローナル抗体は特異的であるため、アッセイの一次抗体として、または組織中の抗原の検出に優れており、ポリクローナル抗体と比較し、モノクローナル抗体の均一性は非常に高くなっています。
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