活性化部分トロンボプラスチン(APTT)測定はプロトロンビン時間(PT)とともに日常の診療で行われている検査です。APTTは内因系の凝固異常の確認にために用いられる検査で、APTTの延長は内因系凝固因子の異常に由来します。また抗凝固薬投与時の血液検査において、ワーファリン内服時はPT-INR、ヘパリン静注時はAPTTを測定しヘパリンコントロール時のAPTT値は、 基準値の約1.5~2.5倍延長 になるよう調節していきます。
APTTが延長する原因
APTTが延長する原因として下記の原因が考えられます
・内因系凝固因子(凝固第VIII、 IX、XI、XII因子)活性低下:
・ループスアンチコアグラント(LA):抗リン脂質抗体症候群
・共通系凝固因子(凝固第V, X因子、フィブリノゲン低下症)活性低下
・肝障害
・抗凝固療法,ビタミンK欠乏症䛾一部
・播種性血管内凝固(DIC)
APTT短縮
・凝固因子製剤(ノボセプンなど)を投与した検体
・ステロイド使用の検体
クロスミキシング試験の適応
凝固因子欠損やインヒビターでは治療方法が異なり鑑別が重要で、一般的に患者血漿に正常血漿を添加して補正効果をみるクロスミキシングテスト(混合試験)が行われます
PTの延長(PT-INR上昇)がみられた場合にも、クロスミキシング試験を行う場合がありますが、頻度的にはPTT延長時に行う機会の方が多いと思います。
クロスミキシング試験の検査手順
まずはPTやAPTTの測定が行われます。延長が認められた場合に、クロスミキシング試験が実施されます
正常血漿と被験者血漿の混合血漿の作製しAPTTを測定します
1) 正常血漿調整後に速やかに測定
2) 混合後37℃で二時間加温して測定
第Ⅷ因子インヒビターは温度、時間依存性があるため必ず2時間インキュベートします
3) 表に測定値を入力
・表は縦軸に凝固時間、横に被験者血漿混合比率(%)としてグラフを作成する
・混合比率とポイント数は0,10,20,50、100%の5点で行う
4) 視覚的に評価する
正常血漿の作製方法
プール血漿
いずれか方法で処理した健常人クエン酸Na加血漿を20名以上より採取し,プールし,正常(プール)血漿として用い小分けし-70℃以下で凍結保存する
市販正常血漿
倫理的に厳しい場合は市販の血漿を購入してください
どの正常血漿においても残存血小板数が少ないものが望ましいです
クロスミキシング試験の結果解釈
0%から100%を結ぶ直線に対して上にあるか下にあるかでインヒビターパターン、凝固因子欠損パターンに区別されるインヒビターパターン
0%から100%を結ぶ直線に対して上に凸であればインヒビターパターンとなる
血友病患者では、凝固因子製剤の補充が行われインヒビターが発生し、中和療法がおこなわれます。このため正確なインヒビターの定量が求められます
LA 活性が凝固因子測定に影響をおよぼす場合があり、特異的な凝固因子単独よりも複数の凝固因子活性が軽度低下することが多いです。また混合直後と2 時間後の混合試験の結果を比較し,直後からAPTT 延長が認められるものはLA の可能性が高いです
凝固因子欠損パターン
0%から100%を結ぶ直線に対して下に凸であれば凝固因子欠損パターンとなる
凝固因子欠損やインヒビターでは治療方法が異なってきますので正確な計測が要求されます。また保険収載(100点)されている検査項目ですので、算定漏れがないよう注意が必要です。
引用
・金沢大学 血液・呼吸器内科ホームページ
・「凝固検査標準化䛾現状」 クロスミキシングテスト ー 標準化における課題と現状 ー
・Clinical Question 2017年3月20日 J Hospitalist Network資料
はじめまして!生化学分野を担当している検査技師です。いつも記事を拝見させていただき勉強させてもらっていました。
返信削除質問させていただきたいことがあり今回コメント欄を使用させてもらいます。
臨床化学分野の精度管理についてです。
日本臨床化学会クオリティマネジメント専門委員会が提唱した「生理的変動に基づく許容誤差限界」を 採用する方法
での内部精度管理を検討したいと思っています。ただ実際に運用するにあたって、ターゲットはどのように算出するのか、許容誤差限界の範囲をどう計算したらいいのか分かりません。低レベルな質問で申し訳ありません。もしご回答いただけたらよろしくお願いします。
著者
返信削除こんにちは
コメントありがとうございます
今度記事にしますね
しばしお待ち下さい