体腔液(胸水・腹水・心嚢液)採取時の注意事項

2021年8月4日水曜日

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体腔液(胸水・腹水・心嚢液)とは

そもそも体腔液は体壁側を覆っている漿膜(胸膜、腹膜、心膜)と臓器表面を覆っている漿膜の間の空間(胸膜腔、腹膜腔、心膜腔)に貯留する液体にことを言います。

胸水で10~15mL、腹水:20~50mL、心嚢液で20~50mLほど存在し、炎症や悪性腫瘍などの病態が存在すると体腔液が貯留します・

胸水が貯留する疾患と治療


胸水貯留をきたす原因として,うっ血性心不全,肺炎(細菌性胸膜炎),癌性胸膜炎,結核性胸膜炎の頻度が高いです。

治療としては、症状および基礎疾患の治療、症状のある胸水は場合によりドレナージ、肺炎随伴性胸水および悪性胸水に対するその他の治療を行います

腹水が貯留する疾患


腹水は腹腔内臓器の運動の摩擦を防ぎます。腹水が貯留する疾患として、肝臓由来の疾患、その他の疾患に由来します。

肝臓由来の疾患として門脈圧亢進症 、慢性肝炎、アルコール性肝炎、肝静脈の閉塞、

その他の疾患としては心不全,ネフローゼ症候群,重度の低アルブミン血症,収縮性心膜炎などにより腹水貯留をきたします・

心嚢水が貯留する疾患と心タンポナーデ

心膜腔(心嚢)には、正常でも20~50mLの心嚢液が存在し、心膜の摩擦を防いでいます。

心嚢液貯留とは、心膜の中に液体がたまった状態で原因として、急性心膜炎、心筋梗塞による心破裂、大動脈解離、悪性腫瘍、外傷などがあります。

心膜腔に心嚢液が多量にあるいは急速に貯留し心膜内圧が上昇し、心室拡張障害をきたし、その結果、

激しい静脈還流障害、心室充満低下とする拍出量低下を生じた病態を心タンポナーデといいます。

心タンポナーデは、大量の心嚢液貯留によって心臓への血液の流入が難しくなることで発生し、結果として全身に十分な血液を送り出せなくなります。

体腔液検査でわかることと検査データ


肉眼、生化学・免疫学的検査、細菌学的検査、細胞形態学的検査により炎症、循環障害、悪性細胞などの体腔液貯留の原因を探すことが出来ます。

適正な検査結果を得るためには適正な検体処理採取が必要になります。

体腔液にヘパリンを入れる理由

検体採取とその取扱い

原則として穿刺液の検体採取時には抗凝固剤は使用せず,速やかに検査室へ提出します。

自動血球分析装置で体腔中の細胞数算定する場合は,抗凝固剤(ヘパリンもしくは EDTA2K 等)を用いることがあります。

ただしヘパリン使用時はサムソン液の染色には適さいとされる点に注意が必要です。

細胞診検査がある場合は抗凝固剤を添加する事が必要です


胸水、腹水等の体腔液はフィブリン析出を防ぐ為、抗凝固剤を添加します

検体1mLに対して、ヘパリンの場合0.01〜0.1mg、EDTAの場合1mg、3.8%クエン酸ナトリウムの場合0.1mL、フッ化ナトリウムの場合5〜10mgを添加して下さい。

細胞診と同一検体でEGFR検査の依頼がある場合は、ヘパリンは使用できません

穿刺液検査の穿刺液の処理と保存


原則的に滅菌試験管に採取し、放置するとフィブリンの析出、細菌の増殖、細胞の変性が起こるので、なるべく速く検査室に提出する事が重要です。

速やかに検査室へ提出できない場合は適切な条件で保存する必要があります。

やむを得ず保存する場合は抗凝固剤(クエン酸ナトリウム、EDTA、ヘパリンなど)を加えて氷室保存(冷蔵保存)してください。

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