病院機能評価と受審メリット
病院機能評価は病院を対象として体の運営管理および提供される医療について、当機構が中立的、科学的・専門的な見地から評価を行うツールです。
病院機能評価は業務改善で受審することが多いですが、「緩和ケア病棟入院料」「緩和ケア診療加算」「総合入院体制加算」算定時の施設基準となっています
また病院機能評価を受けた場合は非医師でも理事長になることができます。また病院機能評価の結果は広告できます
病院機能評価受審の流れ
病院機能評価受審の申し込みから認定後までの流れは下記のとおりです
1. 申込
2. 受審準備
受審申込
1)契約書・その他関係書類の送付(オンラインストレージサービスの登録)
2)契約締結・申込金入力
3)病院基本情報の確認・入力
4)訪問審査日程連絡(電話)
3. 資料提出» 現況調査票施設基準等に関する状況の提出
4. 病院資料の提出
5. 自己評価調査票の提出(Web)
6. 訪問審
病院機能評価と受審にむけた院内での準備
受審病院説明会でご紹介している、病院内での受審準備の進め方の一例です。施設規模などにより若干異なります
1. 実施体制の整備
1)プロジェクトチームの立ち上げ等スケジュールの立案
2)受審宣言から訪問審査までの計画目標の共有
3)病院全体への周知受審準備の情報収集
2. 自己評価の実施
1)自院の状況の評価改善活動の実施 → 「CおよびB」の項目の改善と改善内容の定着
書面審査
病院機能評価の審査は大きく2つに分けられます。
・現況調査票(①施設基本票・②部門別調査票・③診療機能調査票・④経営調査票)
・自己評価調査票
書面審査は事前に2種類の調査票を作成し、提出する必要があります。
また調査票はサーベイヤーが病院の機能を事前に把握し、訪問審査に活用します。
現況調査票を提出する際には、
・ 病院の沿革
・ 病院案内
・ 組織図
・ 入院案内
・ 委員会組織図
・ 会議・委員会一覧(開催頻度と全構成員の職種・役職がわかるもの)
以下の資料も提出する必要があります。
現況調査票で要求されていること
・提出期限:訪問審査2ヶ月前の1日
現況調査票は、以下の4つから構成されています。
1)施設基本票
・ 医療安全・感染管理・臨床指標等、医療の質に関する事項
・ 患者数・職員数・病床利用率・平均在院日数など、病院の概要
2)部門別調査票
・ 病棟部門、薬剤部門、臨床検査部門など、各部門の設備・体制・実績などに関する事項
3)診療機能調査票
・ 各診療領域における主要な検査・手術の実施有無・件数
4)経営調査票
・ 収益および費用の実績
訪問審査
実際に訪問予定日までに準備を終えて審査日当日となります
1. 1日目
・ 開始挨拶・メンバー紹介
・ 病院概要説明
・ 書類確認
2. 2日目
・ チーム別部署訪問
・ 講評および意見交換
審査後の流れ
1. 中間的な結果報告
・訪問審査より概ね6~8週間後に贈られてきます○この報告書では評価「C」の項目の有無をお知らせするとともに、
「C」の項目がない場合はそのまま評価部会に進みますが、「C」の項目がある場合は「補充的な審査」受審希望の有無を表明します。
また、受け取った報告の記載内容に事実誤認がある場合は、受領後1ヶ月以内に「疑義の確認」を申し出ます。
補充的な審査を経て、評価部会 → 評価委員会 → 運営会議で審議後、審査結果が通知されます。
2. 受審病院の改善の取り組み
病院機能評価では、一定の水準に達しているとはいえないと評価した項目(C評価)について、受審病院に一定期間内の改善を求め、改善を確認して認定するまで、繰り返し審査(補充的な審査・確認審査・再審査)を行っている。受審病院は、指摘された課題について、当機構からの支援を受けて改善に取り組んでいる。一般病院3では、受審病院によるC評価項目の改善の取り組みが、運用実績などから定着したと確認された場合に改善と判断している。「補充的な審査」で、定着が確認されなかったC評価項目については、C評価のまま「条件付き認定」とし、一定期間後(6カ月が多い)の「確認審査」で、定着状況を確認のうえ「認定」を行うこととしている。
審査結果通知
評価部会・評価委員会・運営会議を経て、評価結果が確定し郵送にて結果を通知されます。認定の場合はこの通知から概ね3週間で認定証が届きます。
※ 通知後(合格通知後)の注意事項
合格後に医療事故が起きた場合も報告書の提出義務があります
認定有効期間中または受審契約締結後、重大な医療事故等が発生した場合は、45日以内に「医療事故報告書」の提出いただく必要があります。
また、認定有効期間中または受審契約締結後、重大な法令違反等を認知した場合には、遅滞なく報告書を提出いただく必要があります。
病院機能評価で臨床検査室で問われる事項
病院機能評価で臨床検査領域で問われる事項は下記の3点に該当する検査を行っている場合は書面作成などの対応が必要です
・2.2.3 診断的検査を確実・安全に実施している
・3.1.2 臨床検査機能を適切に発揮している
・3.2.1 病理診断機能を発揮している
・3.2.3 輸血・血液管理機能を適切に発揮している
2.2.3 診断的検査を確実・安全に実施している
【評価の視点】
・外来・⼊院を含め、検査を確実・安全に実施していることを評価する。
【評価の要素】
・必要性の判断
・必要性とリスクに関する説明
・侵襲的検査の同意書の取得
・安全な検査の実施
・安全に配慮した患者の搬送
・検査中、検査後の患者状態・反応の観察
・⾃院で⾏えない検査への対応
・診断的検査には、検体検査、⽣理検査、内視鏡検査、放射線検査、造影検査、⽣検などが含まれ、部⾨に関係する項⽬があっても、安全については本項⽬で評価する。
・⾼齢者や障害者など患者の特性に応じた配慮を確認する。
・初診患者に対し、医師の診察前に検査が⾏われている場合、内容とともにその指⽰がどのように出されているのかを確認した上で、その妥当性を評価する。眼科などでは診察の⼀環として⼀般的に⾏なわれており、⼀律に禁ずるものではないが、X線検査などでは特に問題になり得る。
画像撮影時の安全性の確保として、放射線防護、妊婦の撮影、MRI検査時の持ち込み品などの対応について確認する。造影剤使⽤時の安全性の確保として、医師がスタンバイしていることを確認する。それぞれの検査内容に応じて予期される異常への対応⽅法、予防体制などを評価する。
3.1.2 臨床検査機能を適切に発揮している
○ 病院の機能・規模に応じた臨床検査(委託を含む)が適切に実施されていることを評価する。
【評価の要素】
・必要な検査項⽬の実施
・検査結果の迅速かつ確実な報告プロセス
・異常値やパニック値の取り扱い
・検体交差を起こさない検体検査処理プロセス
・精度管理の実施
・検査後の検体の取り扱い
・夜間・休⽇などにおける検査ニーズへの対応
検体検査、⽣理機能検査を対象として評価します。臨床検査の質の向上に向けた取り組みを確認する必要があります。 検査の指⽰が出されてから、採⾎等検体の採取、ラベリング、検査の実施、異常値への対応、精度管理、結果報告という⼀連の流れに沿って各プロセスを確認します。特殊・⾼度な検査の委託について、委託の可否・委託先・検査項⽬等を承認する仕組みがあり、適切に運⽤されていることを確認する。
3.2.1 病理診断機能を発揮している
【評価の視点】
・病院の機能・規模に応じて病理医が関与して、病理診断が適切に実施されていることを評価する。
【評価の要素】
・検体交差を起こさない病理検査処理プロセス
・病理診断の精度の確保
・診断結果の迅速かつ確実な報告プロセス
・病理診断報告書や標本などの保存・管理
・危険性の⾼い薬品類の保管・管理
病院の機能・規模に応じて総合的に判断します。⼿術内容に応じて術中迅速診断に対応していること、病理診断の質の向上に向けた取り組みを確認します。
※特殊・⾼度な病理診断
・ガイドラインに沿って判断されているかの状況については『1.5.2診療の質の向上に向けた活動に取り組んでいる』で評価する。
・CPCなど病理学的検討会の開催については『1.5.2診療の質の向上に向けた活動に取り組んでいる』で評価する。
・検体等の誤認防⽌対策については『2.1.3患者・部位・検体などの誤認防⽌対策を実践している』で評価する。
・病理診断結果が依頼医に確実に報告され、確認されているかについては『2.1.4情報伝達エラー防⽌対策を実践している』で評価する。
・感染防⽌対策については『2.1.9医療関連感染を制御するための活動を実践している』で評価する。
・ホルムアルデヒドの作業環境測定などの安全管理については『4.2.3職員の安全衛⽣管理を適切に⾏っている』で評価する。
・⽇常的に⾏われる病理診断以外の外部委託については『4.4.3効果的な業務委託を⾏っている」で評価する。
3.2.3 輸血・血液管理機能を適切に発揮している
・確実・安全な輸⾎療法を実施するために、輸⾎・⾎液管理が適切に⾏われていることを評価する。
【評価の要素】
・輸⾎業務全般を監督・指導する責任医師の実務実態
・輸⾎⽤⾎液製剤の発注・保管・供給・返却などを⾏う担当者の明確化
・発注・保管・供給・返却・廃棄
・必要時の迅速な供給
・⾃記温度記録計付き専⽤保冷庫・冷凍庫での保管・管理
・使⽤された⾎液のロット番号の記録・保存
・輸⾎⽤⾎液製剤の使⽤状況の検証
臨床検査領域でのPR事項と問題点
各部門でサーベイヤーPRしたい事項や問題点を自己評価表にまとめておかねばなりません指摘されることもあるためあまり問題点は書かないかと思います
臨床検査領域でのPR事項と問題点の記載方法の事例の集めてみました。医療法人青鳳会 美摩病院、金沢大学、国立がんセンターの例を挙げます。各病院HPより引用しております。
2.2.3 診断的検査を確実・安全に実施している
医療法人青鳳会 美摩病院の事例
診断的検査は、医師の指示の下、検体検査・生理検査・画像診断等が適時行える体制にある。実施手順、誤認防止対策、急変時の対応などを定め、安全に実施している。内視鏡や造影検査など侵襲を伴う検査は事前に説明と同意を得ており、同意書の保管も適切である。検査中・後の患者の状態に関しては、決められた項目に応じて適切に観察している。自院で行えない検査などは他院に紹介するなど適切に対応している。診断的検査は確実、安全に実施されている。
3.1.2 臨床検査機能を適切に発揮している
医療法人青鳳会 美摩病院の事例
臨床検査技師は常勤 1 名・非常勤 1 名が在籍し、検体検査、生理検査等に対応している。受け付けから実施までの流れは適切で、異常値やパニック値が発生した場合は、医師に直接もしくは病棟に連絡するなど、迅速に対応している。外部委託の際も結果は速やかに報告され、スキャンもしくは紙で保管されている。検査後の検体の保管および感染性廃棄物としての廃棄は適切に行われている。時間外はオンコール対応となっており、必要時は看護師がヘモグラムや血液ガス測定を行うため、使用法の指導を適宜行っている。
金沢大学の事例
アピールしたい点
2019年度、国際認証検査室(ISO15198)の更新審査を受審し、検体検査部⾨に加え、⽣理機能検査部⾨の認定範囲拡⼤を果たした。検査前、中、後のすべてのプロセスで⼿順書が整備され、定期的にマネジメントレビューを実施している。夜間・休⽇の時間外検査業務拡⼤のためのバックアップ要員の配置など、ニーズに応じた対応を実施している。微⽣物検査室の、365⽇体制を維持するとともに、感染対策チーム(ICT)、抗菌薬適正使⽤チーム(AST)のメンバーとして院内活動を積極的に⾏っている。外来の採尿採⾎室が拡⼤更新され、整備が完了した。検体検査の報告は、緊急検査で30分以内としている。検査結果の報告時間は、定期的に調査され、管理者によって評価されている。検体検査の異常値は、設定された基準に基づいて再検査が実施され、パニック値は、診療担当医師に報告している。医師への報告ができない場合は、病院全体の運⽤規定により確実に伝達されるようになっている。精度管理は、毎⽇毎回、内部精度管理を実施している。外部精度管理は、定期的に、確実に実施され、部内でレビューされている。
課題と認識されている点
⽣理機能検査の超緊急連絡値(いわゆるパニック値)は、主治医への連絡とともに、現場で直ちに応対できる医師への連絡が必要であることを理解している。しかし、⽣理機能検査のパニック値の取り扱いに関するガイドラインはなく、また、それぞれの施設の環境によって、対応の⽅法が⼀律に規定できないと考えている。当院のエビデンスを基に「緊急時対応⼿順」を作成しているが、症例ごとに必要な対応が異なりマニュアル化が難しい
3.2.1 病理診断機能を適切に発揮している
金沢大学の事例
病理検査の全⾏程でバーコード管理を⾏い、1検体番号ずつの検体処理を徹底している。さらに切り出しの⼯程では検体の写真撮影を⾏って、万が⼀検体交差が起こった際にも切り出し時の写真を確認することで鑑別できるような運⽤となっている。病理医は5名中3名が病理専⾨医で迅速診断にも随時対応可能である。また、病理報告書は必ず病理専⾨医のダブルチェックを⾏う体制をとっており、2名の病理医の名前で報告される。困難症例では病理学会のコンサルトが使⽤できる。病理診断報告は受付から診断までの経過⽇数をモニタリングしており、報告の遅延がないか確認している。術中迅速病理検査では術者と対話ができる通信⼿段を使⽤して報告している。病理診断結果の未読既読管理を医療安全管理部と共同で⾏っており、臨床医が診断結果を確認したことを全症例で確認している。⻑期間確認されない報告に対しては、各診療科のリスクマネージャーに未読リストを配布し、報告書の確認後、リストにサインをした上で返却してもらっている。また、緊急を要する報告は診断医が臨床医に直接電話報告を⾏っている。もし臨床医が電話に出られない時は、診療科⻑に報告を⾏うこととしている。病理診断報告書は電⼦カルテと病理部⾨システムからすべて参照ができる状態で集約されている。プレパラートは年度別に保管され、電⼦化された画像も臨床医が電⼦カルテからすべて参照可能である。ブロック標本はすべて保存している。毒劇物は記録簿で出⼊管理している。作業環境測定は6ヶ⽉に⼀度実施しており、管理区分2-3となった場合は、原因追究と対策を⾏い、改善に努めている。
3.2.1 病理診断機能を発揮している
病理診断としては、形成外科手術の摘出組織や上部消化管内視鏡の生検組織が主で、外部委託の手順は確立している。結果は迅速・確実に主治医に報告され、報告書も保管されており、適切である。ホルマリンはあらかじめ分注されたものを購入し、必要時に払い出す運用となっている。
国立がんセンターの事例
3.2.1 病理診断機能を発揮している病理診断部門は、11 名の常勤医師を有し、年間 45,000 件を超える病理検体を取り扱っている。病理標本は、作成過程においてバーコード管理がなされ、検体交差を起こさないシステムが確立している。また、手術標本は、手術室で処理されず、時間外も必ず病理検査室で主治医と検査技師が立ち会って確認・処理が行われている。細胞診は細胞検査士がダブルチェックし、専門医が最終チェックを行っている。組織診断は、臓器別に専門性が確立し、必ず 2 名の病理医が診断しており、診断の質が保証されている。さらに、外来において、セカンドオピニオンの病理外来と、日々の各科外来に持ち込まれる病理標本の診断にも携わり、希少がんの診断等でわが国の指導的役割を担っている。加えて、ホルマリン等の保管や環境整備は適切な対応がなされており、すべての場面でエアダクトによる環境整備が行われている。病理診断部門は秀でた機能を発揮しており、極めて高く評価できる。
3.2.3 輸血・血液管理機能を適切に発揮している
金沢大学の事例
輸血用血液製剤は、主治医の指示を受けて発注され、検査室で管理されている。温度管理を含む保管、照合後の払い出しはマニュアルに沿って適切に実施されている。昨年は MAPを 6 単位発注しているが、廃棄の実績はない。使用された血液製剤は患者名とともに種類、ロット番号、投与量などが台帳管理されている。
国立がんセンターの事例
輸血検査・細胞治療部門には、日本輸血・細胞治療学会および日本造血細胞移植学会の認定医である専任の輸血責任医師 1 名と認定輸血検査技師 1 名を含む検査技師 6 名が配置され、輸血用血液製剤、アルブミンを管理している。輸血は副作用も含めて電子システムで管理され、輸血の依頼には 24 時間対応している。年間 100 例前後の造血幹細胞移植を実施し、大量の血小板製剤を使用する施設であるにも拘わらず、造血幹細胞移植科および血液腫瘍科、小児腫瘍科との合同カンファレンスの毎週の開催や、3 名の細胞治療認定管理師による血液製剤の適正使用への関与等により、廃棄率を 0.1%以下としている。幹細胞移植に伴う血液型変更に対しても、病棟との連携のもとで、継時的な変化を含めてきめ細やかに情報共有と対応を行っており、輸血・血液管理機能は高く評価できる。
【課題と思われる点】
手術用血液は診療科の要望に応じて準備されているが、その適正性を検証するなど、血液製剤の適正使用に向けたさらなる取り組みが期待される。
初めて病院機能評価審査を受けました
自身の勤務先で数年前に病院機能評価審査を受けました。当時は勤務先の検査室にマニュアル類は一切存在しなく当番マニュアルすら存在しないありさまでした。当時あれだけ上司に作成すべきと進言したのに拒否していた上司が手のひらを反してマニュアルが必要と言って言っていたことが懐かしいです。実際一番大変なのはマニュアル類が一切存在していなかったことから、一から入力してタイピングの日々でした。初回は文書作成が大変でした。
病院機能評価審査を更新してみました
更新の際は一回目程は大変ではありませんでしたが、レイアウトの図面や検査機器や試薬の変更の手直しがあったため多少の修正を行うだけで対応しましたが
何故かその時になってホルマリンの管理運営を指摘され、是正報告書を書きました。一回目よりか作成する文章量は少なかったです。病院機能評価受審は一回目が一番大変でした。
最後に
臨床検査領域での病院機能評価受審に関してまとめてみました。これから初めての受審を迎える方、機能評価更新の方まで様々でしょうが、せっかくの機会ですので職場における現状の問題点を洗い出し改善を図りましょう。
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