血液ガス検査時の検体採取時の注意事項を勤務する施設の方から問われることがありました。実際血液ガス検査検体は採取から、結果報告まで速やかに行われる必要があり、データに影響が出やすくなります。
血液ガス検査検体採取から分析までの工程
1.採血前の準備
・動脈ラインからの採取時は、ライン中のヘパリン生食液を完全に除去します。
また血液ガス検体は、血液培養等の血液検査検体と一緒に採取採取されることも多く、その場合は血液ガス検査検体を先に採取します。理由は後のほうに記載しておりますが、血液ガス検体は常時血液中の細胞が代謝をしていることから、PHやCO2などの測定データに変動をきたします。このため、指定がない場合は、血液ガス検体を先に採取し、速やかに検査部門に提出するなどして、速やかに測定を実施する必要があります。
2.採血の取り扱い
・気泡が混入した際は直ちに除去する
・(気泡除去後)ヘパリンと血液を確実に混和
・保存と運搬・保存はせずに速やかに測定する
3.測定前の準備
・取り違えがないか確認する
・凝血がないか確認する
4.血液ガス分析装置操と測定の実施
1)気泡の除去
2)凝血の有無の確認
3)測定
※注意点
・指で軽くたたいて気泡を除去する
・凝血がある場合は、血液を押し出しにくい
検査結果測定への影響
1.検体の大気への暴露
大気による検体の影響は最も多い検査誤差の原因となります。血液と大気の2媒体間の平衡移動により検体中のPCO2低下、O2の変化の危険性を伴います
血液中の
・PO2が空気中のPO2を下回るPO2結果は高くなる
・PCO2が空気中のPCO2を上回る→ PCO2結果は低く出る
このためシリンジ中の空気を抜いてください
2.シリンジ中の気泡の除去方法
シリンジ中の気泡は血液ガス分析結果に影響を及ぼします。このため気泡が入っていないか確認します。気泡が入っている場合は、採決後混和を行う前にシリンジの横を優しく指ではじき気泡を除去します
3.放置による血球成分の沈降
赤血球の沈降は検体を分離させヘモグロビンとヘマトクリットの不正確な結果に繋がります。採血時と測定前はしっかりと混和してください。
4.代謝活動の影響に留意
血液中の細胞の代謝活動が検査結果に直結します。
• すぐに測れないとき(検体を室温放置した場合)は
→ PaO2、pH : 低下する
→ PaCO2 : 高くなる
予防方法としては
• 室温で10分以内に測定する
• 無理なら冷蔵保存で1時間以内に測定する
この2点が重要となります。
検査結果のアセスメント
1.PHと病態
• 基準値: 7.4 ± 0.05
• <7.1 : 声明を脅かすアシドーシス
• 7.1~7.3 : 重篤な非代償性アシドーシス
• 7.3~7.5 : さらなる評価を要する軽微な逸脱
• 7.5~7.6 : 重篤な非代償性アルカローシス
生命を脅かすアルカローシス
2.アニオンギャップ(AG)
• 代謝性アシドーシスが認められた場合、AGを測定・評価する
• AGは測定可能な体内の陽イオンと陰イオンの差
AG = Na-CL-HCO3- より算出される
• 基準値: 12 ± 2mEq/L
• AG増加時の代謝性アシドーシス
→ 乳酸アシドーシス、糖尿病性ケトアシドーシス、腎不全
• AG正常時の代謝性アシドーシス
→ 下痢、尿細管性アシドーシス
3.代謝性アシドーシス
代謝性アシドーシスは重炭酸イオンの欠乏に関連した負のベースエクセスに示される
考えられる原因として
・嘔吐(胃液の喪失)
・低カリウム血症
・代謝性アシドーシスの治療(重炭酸の摂取)
があげられる。追加すべき検査としては乳酸と電解質の測定が必要となります
4.代謝性アルカローシス
代謝性アシドーシスは重炭酸イオンの過剰とH+イオンの喪失による正のベースエクセスに示されます。考えられる原因として
・腎不全
・非代償性の1型糖尿病によるケトアシドーシス
・飢餓
・アルコール中毒,下痢
が考えられ、追加すべき検査として乳酸と電解質(カリウム測定)が望ましいです
※代謝性アルカローシスはカリウムの低下を伴います
5.呼吸性アシドーシス
呼吸性アシドーシスは肺からのCO2排出低下による
PCO2上昇によって示されます。考えられる原因として下記の原因が考えられます。
・呼吸器系の閉塞(異物吸引、気管支喘息)
・心血管不全
・肺疾患
・不適切な呼吸調節
・中枢神経異常
6.呼吸性アルカローシス
呼吸性アシドーシスは肺からのCO2排増加によるPCO2低下によって示されます。
考えられる原因として下記の原因が考えられます・
・興奮恐怖などの心理的な原因(呼吸刺激)
・機械的な過換気/不適切な呼吸調節
・肺線維症
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