肝炎検査ではHBs抗原とHCV抗体を検出し、肝炎の診断や治療を行います。
特に、近年の核酸アナログ製剤の進歩により、ウィルスの排除は可能となっております。
そのような状況下であるにも関わらず治療開始遅延が生じたり、癌に進行したりして、により患者にとって不利益な事態になったり訴訟に発展するケースもあるようです。
そのため肝炎陽性者の拾い上げの重要性が注目されております。
検査陽性者が治療されていない割合
平成 22 年に佐賀大学附属病院で実施されたスクリーニング検査結果を解析したところ,HCV抗体陽性者は 487/6612 名(7.4%)であった.
電子カルテの記載を確認したところ陽性者の約80% は専門医にコンサルテーションされていない可能性が示唆されたとの報告があります
※出典:古川(江口)尚子,河口康典,大枝 敏,他:大学病院の非肝臓内科における HBs 抗原およびHCV 抗体陽性者に対する肝疾患診療の実態.肝臓 54 ; 307―316 : 2013
※出典:Tokushima Y, Tago M, Tokushima M, et al : Management of Hepatitis B Surface Antigen and Hepatitis C AntibodyPositive Patients by Departments Not Specializing in Hepatology at aSuburban University Hospital in Japan : A SingleCenter Observational Study. Int J Gen Med 13 ;743―750 : 2020
訴訟となった事例
事例1
・C型肝炎に罹患していることを含めて紹介され、入通院をしていた患者さんに対し、担当医師らが約6年間にわたりC型肝炎に対する抗ウイルス療法を全く行わなかった結果、患者様が死亡(※富永愛法律事務所HPより引用)
事例2
肝硬変で通院していたが後に肝がんで死亡した男性の妻と子どもらが、医療機関等担当医に対し、定期的な検査を怠ったために肝がんの発見が遅れて死亡した、と主張した。この事例では請求総額6426万余のうち、3616万余の支払義務を認めております(※弁護士 小野郁美HPより引用)
肝炎陽性者の拾い上げ方法の事例
今回の話に出ている”肝がん”,”定期的な検査の懈怠”,”発見遅れ”は訴訟につながり負ける可能性は高くなります。
診療に対する信頼性を下げないために、何かしらの見落とし対策が必要で、肝炎陽性者の拾い上げが必要となります。
肝炎の拾い上げに関しては兵庫方式がインターネット上で引用しやすい方式だと考えられます
1)院内拾い上げ
検査部より1週間毎に肝炎ウイルス陽性患者を抽出
2)カルテに反映
肝炎コーディネーターが患者カルテに注意喚起
3)主治医に確認
3ヶ月後カルテを確認する。対応なければ、主治医に対応確認書を配布
出典:https://hyo-kanshikkan.com/cms/wp-content/uploads/2021/03/04087dff8513478b6e881584cb425d54.pdf
その他方法としては、電子カルテのメール通知、パニック値運用があります。
パニック値運用の場合、コメントにも消化器科の肝臓専門医へのコンサルトを依頼する文を付記する必要があります。
肝炎陽性者の拾い上げや介入の効果
肝炎陽性者の拾い上げ対策や介入の効果ですが、肝炎ウイルスが陽性である旨をカルテ記載が52.5%から7.7%に減少し、DNA検査やRNA検査の件数は装荷しております。
※出典:藤原 美子.多職種連携による肝炎ウイルス陽性者拾い上げ活動の効果.肝臓 64 巻 10 号 487―496(2023)
肝炎対策のチームが介入する事が何かしら重要なります
さいごに
肝炎陽性者の拾い上げ方法を紹介させていただきました。肝炎の拾い上げには臨床検査技師の協力が不可欠です。
チーム医療の一環として、新規活動や診療件数増加のためにも有用な行動と思われます。
電子カルテの機能や臨床からの要望などを踏まえて施設の状況に応じて拾い上げ対策を講じてください。
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