マスクの用途


医療現場では院内感染予防のためにマスクを着用することが多々あります。
臨床検査技師の業務においても同様にマスクを着用しておりますが、用途に応じて使い分けております。

臨床検査業務で使用するマスクの種類


臨床検査技師の業務では生理検査、病理検査、微生物検査やPCRと言った遺伝子検査を行いまして、
検査内容によっても若干ですが使用するものが異なります。
生理検査や生化学や血液一般と言った検体検査ではサージカルマスクが用いられます
結核菌やウィルスを扱う業務ではN95マスクを着用する場合があります
また病理業務ではホルマリンや有機用場溶媒を用い場合、活性炭マスクや防毒マスクを用いますし、
病理解剖を行う場合はN95マスクや活性炭マスクを使用します
病理検査業務が最も使用するマスクの種類が多いように思えます

マスクの分類と種類


実際世に出回っているマスクは沢山の種類やメーカーの物が出回っております
・防塵規格マスク(呼吸保護具)
・N95マスク(米国、NIOSHの認定)
・医療用マスク(サージカルマスク)
・家庭用マスク(花粉対策、ウィルス対策、風邪対策、PM2・5対策)
家庭用から軍事用まで多くの現場で必要とされております

産業用マスク

主に工場などで作業時の防塵対策として使用されるマスクです。
工業用マスクや防塵マスクとも呼ばれ、粉塵の量や性質により口や鼻だけを覆うもののほかに顔面すべてを覆うものもあります。

活性炭マスク

文字通りの活性炭が用いられたマスクです。活性炭は主に炭量の比較的高い物質(ば木材・煤・ナッツの殻・骨・石油粕)からなります。
特にココナッツには多くの微空洞があり、
強度も高く空気や液体(廃水、空気中の金属粒子、有害気体、有機汚染物)の吸収に優れていることから活性炭の製造に用いられています
防毒・防臭・減菌・防塵など、特に有機気体・酸性発揮物・SO2・CI2 などの刺激の強い気体の場合、防菌・防臭に特に効果的です。

防毒マスク


防毒マスクは、環境に存在する有毒ガスを除去し、浄化された空気を吸収します。
防毒マスクは、面体と吸収缶から構成され、使用できる有毒ガス等の濃度の上限により3種類に分類されます。
作業環境に応じた吸収缶を選び、吸収缶を面体に取り付けなければその硬直を発揮できないのに注意が必要となります

医療用マスク

 
主に医療現場もしくは医療用に使用される感染防止用マスクで、外科手術などの際に使われます。
“外科の”“手術の”という意味から「サージカル(surgical)マスク」とも呼ばれています。    

家庭用マスク


カゼ、花粉対策や防寒・保湿などの目的で日常に使われるマスクです。
素材や形状、サイズなども豊富で、フィルター性能と通気性のバランスがよいため、長時間に渡り、快適に使用できるのも特徴です。
また保湿・保温機能 (気管・ 気管支の乾燥を防ぎ、絨毛 運動が活発化、異物を排出 する機能が高まる)や防寒に使用されます
主に通勤時や家庭で使用し、風邪をひいたときや予防のため、また花粉症対策や清掃時のハウスダスト対策に着用し普段の暮しの上で馴染み深いです

マスクの規格基準

色々なマスクが出回っておりますが医療現場では湿性生体物質などの
液体防御性能がない製品はPPEとしての役割を果たしません。
日本には医療用マスクの性能規格基準が存在しないため
ASTM(米国試験材料協会)が定める医療用マスクの素材条件をマスク選択の参考としております

サージカルマスクの規格

医療従事者が手術中および看護中に着用し着用者の口と鼻から液滴やエアロゾルに放出された細菌を捕まえることを目的としております
遮断性、すなわちフィルター捕集効率の指標にはBFEとPFEがあります。

・医療用マスクの素材条件(ASTM F2100-11)
・特性            レベル1 レベル2  レベル3
・細菌濾過率(%)      ≧95    ≧98     ≧98
・微粒子濾過率(%)     ≧95    ≧98     ≧98
・呼気抵抗(㎜H2O/㎝2) <4.0    <5.0    <5.0
・血液不浸透性(㎜Hg)    80     120     160
・延燃性           Class1   Class1    Class1

※細菌濾過率(%)【BFE】細菌を含む、平均約3μmの粒子が濾過された率を示します。
※微粒子濾過率(%)【PFE】:・平均約0.1μmの微粒子が濾過された率を示します。
※呼気抵抗(㎜H2O/㎝2)【⊿P】呼吸のしやすさを示します。
※血液不浸透性(㎜Hg)【FR】:液体(血液)が飛散した場合、どの程度の圧力にまで耐えうるかを示します。
※延燃性:電気メスを使用する手術室などにおいて、炎の広がりにくさを示します。
     クラス1~3まで3段階に分かれ、数値が小さいほど燃えにくい事を表します。
米国食品衛生局(Food and Drug Administration: FDA)は、サージカルマスクを“Generaland Plastic Surgery Devices”と定め、サージカルマスク基準をBFE95%以上と規定しています

N95マスクの規格

作業者を空気中の微粒子から守るために用います
日本の労働安全基準に基づく防塵マスク規格DS2が相当し
米国労働安全研究所(NIOSH)が認定し 製品には認証番号が表示されています
マスク性能として試験粒子(0.3μm)以上を95%捕集できる事が要求されます。
このため作業用で長時間の使用には向いておりません
医療現場では耐油性能は求められていないこと、N99やN100は呼気抵抗が高く日常の使用には向いていないことから、近年医療機関で感染防止の観点からN95マスクが選択されています

家庭用マスクの規格

花粉対策用

花粉粒子の捕集試験をしており、約30μm以上の 粒子をカットするフィルタを採用、息苦しさを軽減

風邪、ウィルス対策用 

BFE(約3μm)、VFE(約1.7μm)の試験を行い、99%までのフィルタ捕集効果を表記

PM2・5対策用

PFE(約0.1μm)の試験を行い、99%までのフィ ルタ捕集効率を表記

マスクの基本性能を決める要因と選定方法


・フィルター部の捕集(ろ過)効率
・目的に合った大きさの粒子をろ過する機能 (花粉、風邪・ウィルス対策、PM2・5対策)
・形状(いかに顔に密着させ、フィルター部以外からの 侵入を防ぐか(隙間を無くすか)
といった要因でマスクの性能は決定されます

フィルター部の性能試験法

• 花粉粒子の捕集(ろ過) 試験粒子::約30μm
• BFE (バクテリア飛沫捕集(ろ過)効率試験)試験粒子:黄色ブドウ球菌の懸濁液(約3μm)
• VFE(ウィルス飛沫捕集(ろ過)効率試験) 試験粒子:バクテリアオファージ(約1.7μm)
• PFE(微粒子捕集(ろ過)効率試験);試験粒子 ポリスチレン粒子(0.1μm)

マスクの形状


マスクの形状は、大きく分けて3タイプがあります。
1つ目は、マスクの代名詞ともいえる平面的な「平型マスク」。
2つ目は、立体的になるプリーツ構造を採用した「プリーツ型マスク」。
そして3つ目が、顔のラインに沿った形状で密着性を高めた「立体型マスク」です。
形状や素材の利点を活かしたこれらのマスクには、それぞれに多くの特徴があります。
使用目的はもちろんのこと、付け心地や顔との密着性などを考慮したマスク選びをすることで、
捕集や飛散防止といったマスクの効果を格段に高めることができます。    

平型マスク


平型マスクの魅力は、高い保湿性と保温性です。マスク本来の捕集や飛散防止といった機能に加え、睡眠時やエアコンの効いたオフィスなどで、乾燥からノドを守の際に役立ちます。また、天然素材である綿織物を使用しているのも特徴です。

プリーツ型マスク 

 
顔前部にフィットし、圧迫感を与えません。前面がプリーツ状になっているため、口の動きにも柔軟に対応できます。マスクをしたまま話をしてもズレにくい事が特徴です。
また、プリーツを上下に広げて装着することでマスクと口の間に空間が生まれ、呼吸がラクに行えます。

立体型マスク 


人間の顔の形に合わせてデザインされているため、隙間なくピッタリとフィットします。
マスクと口元の間に空間ができるので、装着時の息苦しさやしゃべりにくさが大幅に緩和されます。

マスクに用いられる素材


マスクを製造するうえで用いられる素材として”ガーゼタイプ”と”不織布タイプ”の二種類が存在します

ガーゼタイプ

主に綿織物を重ね合わせたマスクで、最近では中に特殊なフィルタを縫い込んで花粉などの通過を防ぐものも増えています。    

不織布タイプ  

繊維あるいは糸などを織ったりせず、熱的、機械的、化学的作用により繊維を接着またはからみ合わせた薄いシート状の布のことをいいます。複数の原料を組み合わせることで、厚みや空隙を自由に調整できるのが特徴。値段が安く、使い切りを前提にしたものが中心です。粒子捕集性や通気性に優れることからマスクのフィルタ部や紙おむつや生理用品などに幅広く使われています。 

さいごに


臨床検査技師業務で使用するマスクについてまとめてみました。
感染予防や化学物質の暴露防止のためのマスクなど用途は多岐に渡りますので必要に応じて使い分ける必要があります。

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