結合組織の染色法(アザン・マッソン・EVG・鍍銀)と覚えておくべき事項

2021年2月21日日曜日

病理・細胞診

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繊維をターゲットとして特殊染色を実施します


病理組織標本作製時に膠原繊維などの組織内の繊維の状態を評価するために
ターゲットとする繊維に応じて特殊染色のオーダーが入ります

HE染色標本の切片を作成時に同時に特殊染色標本分もセットで作製して
染色標本完成後に病理の先生に提出します

組織内の繊維成分に関して

特殊染色を理解する際に繊維の分布を大まかに知っておく必要があります

膠原繊維とは?

膠原繊維は主に細胞と細胞、組織と組織の隙間を埋めて接着剤みたいな役割をする。結合組織の中で最も重要な気質で膠原繊維の大きな束からなり、主成分はコラーゲンである。組織の欠損が生じた場合再生して補充する役割を有する。

細網繊維とは?

細網繊維は好銀繊維とも呼ばれ細かく分岐して網目状・格子状で、肝臓、脾臓、リンパ節の骨格として組織の構造を維持する役割を担っている。特に肝臓や脾臓の表面を取り巻いて臓器自信を支える柱となっている。

弾性繊維とは

弾性繊維は伸縮性に富み容易に伸びるが、力を取り去れば元に戻るゴムバネのような繊維である。この繊維は主にエラスチンからなり毛細血管以外のすべての動脈に豊富に存在する。

結合組織の分布と性状まとめ

 

膠原繊維

細網繊維

弾性繊維

存在部位

靭帯

軟骨

結合組織

リンパ節

脾臓、肝臓

基底膜

動脈

皮下真皮

電顕像

膠原繊維の大束

膠原繊維小束

 

性状と組成

コラーゲン

レチュキュリン

格子状

網目状

エラスチン

収縮する

膠原繊維染色方法の比較

染色名

アザン

マッソントリクロソーム

ワンギーソン

膠原繊維

(アニリン青)

(ライト緑)

(酸性フクシン)

筋繊維

(アゾカルミンG

(ポンソー)

(酸性フクシン)

(アゾフロキシン)

(酸性フクシン)

(アゾカルミンG

黒褐色

(鉄ヘマトキシリン)

黒褐色

(鉄ヘマトキシリン)

細胞質

(アゾカルミンG

(ポンソー)

(酸性フクシン)

(アゾフロキシン)

(ピクリン酸)

弾性繊維染色法の比較

 

エラスチカワンギーソン

オルセイン

ビクトリア青

弾性繊維

黒褐色

(レゾルシンフクシン)

茶褐色

(オルセイン)

(ビクトリア青)

膠原繊維

細胞繊維

(酸性フクシン)

 

 

筋繊維

(ピクリン酸)

 

 

細胞

黒褐色

青紫

ピンク

マッソントリクロソーム染色とアザン染色


※病理学会HPより引用
マッソントリクロソーム染色は結合組織の検索や糸球体基底膜の観察に用いられる
・肝臓:肝炎、肝硬変(膠原繊維の増生が生じるため)
・心臓:心筋梗塞(膠原繊維の増生がおこるから)
・腎臓:慢性腎炎(膠原繊維の増生がおこるから)

マッソントリクロソーム染色とアザン染色の染色原理

マッソントリクロソーム染色の原理は酸性色素の分子量の差に基づいている。分子量の地位差組織は密な組織に、分子量の大きな色素は粗な組織に吸着されることを利用している。
※色素の分子量
ピクリン酸<オレンジG<アゾカルミンG<酸性フクシン<アニリン青

マッソントリクロソーム染色の染色手順

媒染:重クロム酸+トリクロロ酢酸
水洗:
核染色:鉄ヘマトキシリン
色だし:
媒染:リンタングステン酸
赤血球染色: オレンジG
筋染色:ポンソーキシリジン・酸性フクシン
媒染:リンタングステン酸
分別:酢酸水

アザン染色の染色手順

媒染:重クロム酸+トリクロロ酢酸
水洗:
染色:アゾカルミンG
分別:アニリンアルコール
分別停止:酢酸アルコール
媒染:リンタングステン酸
染色:アニリン青・オレンジG
分別:100%アルコール

アザン染色の染色性

 

マッソントリクロソーム

アザン

膠原繊維

細網繊維

筋繊維

黒褐色


渡辺の鍍銀法

渡辺の鍍銀法は
・網染色の検出
・膠原繊維の検出

※病理学会HPより引用
・上皮性腫瘍と非上皮性腫瘍の検出に用いられる
非上皮性腫瘍は腫瘍細胞が集団を作ることなく細網繊維の間に入り込むが、上皮性腫瘍では細網繊維は集団に入り込まない

渡辺の鍍銀法染色手順

酸化:過マンガン酸カリウム
還元:シュウ酸
媒染:鉄ミョウバン
鍍銀:アンモニア銀
分別:エタノール
還元:ホルマリン・鉄ミョウバン
鍍金:塩化金
定着:チオ硫酸ナトリウム
核染色:ケルンエヒトロート
銀染色の注意点として
・金属の器具は使用しない
・日光の当たるところでは染色しない
・アンモニア銀は再使用不可。廃液は回収してもらう。
ことに注意する必要がある。

渡辺の鍍銀法の染色性

・細網繊維:黒色
・膠原繊維:赤褐色~赤紫色
・核:ピンク

エラスチカワンギーソン染色(弾性繊維染色)


※病理学会HPより引用
動脈硬化症では中膜(弾性繊維)、肺気腫では肺胞壁の弾性繊維の破壊が生じ、観察のt目にエラスチカワンギーソン染色が用いられる。

エラスチカワンギーソン染色の染色性

・弾性繊維:黒紫色
・膠原繊維:赤色
・細網繊維:赤色
・筋繊維:黄色
・核:黒褐色 

まとめ

結合組織の染色法は日々のルーチンに欠かす事のできない染色方法です。

これから国家試験を受けられる学生の方は、病理組織の繊維染色は染色名と試薬、染色態度の組み合わせが問われますので知識を整理しておいたほうが良いです

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