CKMBの免疫阻害法が保険収載から除外され蛋白定量のみ保険請求できます

2022年5月26日木曜日

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CKMBとは

クレアチンキナーゼ(CK)は、骨格筋、心筋等に存在する酵素です。

CKは2量体の酵素でM型(筋型)とB型(脳型)の二つのサブユニットからなり、

主に骨格筋由来のCK-MM型、脳、平滑筋由来のCK-BB型、心筋由来のCK-MB型の3種のアイソザイムが存在します。

CKMBの測定対象疾患

骨格筋、心筋、脳、平滑筋などに障害をきたす疾患の診断や経過観察に有用です。

• 急性心筋梗塞の急性期、 心筋障害の急性期 

• アルコール中毒、 強度の運動後

• 進行性筋ジストロフィー症、 多発性筋炎、 長期透析療法、 妊娠末期

(陣痛時または分娩時)、 脳外傷の急性期、 皮膚筋炎

CKMBの測定方法と特徴


CK-MB の測定法は活性測定(免疫阻害法)、蛋白量測定(免疫学的方法)、および電気泳動法があります。

米臨床生化学アカデミーのガイドライン(2007)は心筋トロポニンを急性心筋梗塞診断の第一選択肢、CK-MB 蛋白量を第二選択肢とし、

CK-MB 活性や他の逸脱酵素は急性心筋梗塞の診断に選択すべきではないとされています。

このため、欧米では蛋白量測定がCK-MB 測定法の主流で、わが国では、汎用自動分析装置を使用して反応時間 10 分間で測定できるCK-MB 活性測定が多用されているらしいです。

免疫阻害法を原理とする試薬

免疫阻害法ではCKの中のMM分画、MB分画、BB分画中の、M分画に対し抗体などを用いることによって阻害し、

残ったB分画のCK活性を測定して、CKMB活性を求めます

・シカリキッド CK-MB(関東化学)

・アキュラスオートCK-MB MtO(シノテスト)

・「セロテック」CK-MB(セロテック)

・ピュアオート®S CK-MB(積水)

・CK-MB試薬・L「コクサイ」(シスメックス)

・イアトロLQ CK-MBレートJ II(LSI)

蛋白定量法を原理とする試薬

CK-MBの測定は従来から免疫阻害法が用いられているが,

ミオキナーゼ,ミトコンドリアCK,マクロCK, CK-MMのサブタイプなどはCK-M抗体では阻害されなく、これらのCKが存在するとCK-MB活性値は高くなります.

この問題点を解決しているのがCK-MB蛋白量を測定する方法で、免疫阻害法とは異なり第一反応でCKMBに対する抗体を用います

・アーキテクト・CK-MB(アボット)

・CK−MB・アボット

・ルミパルス CK−MB(富士レビオ)

・エクルーシス試薬 CK-MBII(ロシュ)

ラテックス法を原理とする試薬

・Lタイプワコー CK-MB mass」

免疫阻害法試薬の問題点であった CK-BB や CK アノマリー等の影響が回避出来ていたと報告されています。

ワコーさんの製品が汎用分析機で使用できる数少ない蛋白定量法の試薬のようです。

再評価が必要となった理由

これまでは2022年3月までは免疫阻害法も蛋白定量法も保険点数が算定できていましたが2022年4月1日以降は免疫阻害法が除外され、蛋白定量法のみが保険対象となりました。

””現在、虚血性心疾患評価におけるCK-MBの評価は、あくまで心筋トロポニンが使用できない場合に限定されるが、用いる場合は免疫阻害法による酵素活性ではなく蛋白量を用いるべきであることは、学会ガイドラインに明記されています。蛋白量への移行を推進する目的で、免疫阻害法での測定を低評価で運用し、施行件数の減少を見た時点で同方の保険収載を廃止すべきである。””

との意見が出されたようです

また””CK-MBを、免疫阻害法と蛋白量測定に分ける。将来的には免疫阻害法の保険収載を廃止する。国内ガイドラインの対応はやや遅れているが、海外ではすでに10年以上前から、測定方法による評価分けが行われている” ことや

””検査目的、対象症例が変わるわけではなく、全体としての普及性の変化はないと判断される。現在免疫阻害法と蛋白量測定との比率は不明であるが、衛生検査所は免疫阻害法を受託していない場合もあり、蛋白量測定の方が多いと思われる。””

などが今回の免疫阻害法が保険収載から除外された理由のようです。

このため令和2年4月1日よりBenceJones蛋白定性(尿)、CK-MB(免疫阻害法)、動物使用検査と一緒に点数が削除され令和2年度診療報酬改定で経過措置が取られました

しかし令和4年度の改定ではCKMB免疫阻害法については削除され、蛋白定量のみでしか保険請求できません。このため免疫阻害法の試薬を用いている施設は測り損になりますので、CKMB測定試薬の切り替えを検討せねばなりません。またその際は基準値や報告単位が変更となりますので、マスタの変更や臨床への説明などが必要となります

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