栄養状態と血液検査2 亜鉛測定の有用性

2017年10月11日水曜日

血液学的検査 生化・免疫学検査 輸血検査

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多量元素と微量元素

現在、地球上で確認されている元素の総数は118種類にのぼりアミノ酸、たんぱく質、核酸、脂肪、糖などに利用されている酸素、炭素、水素、窒素、カルシウム、リンの6種類の元素は体内濃度が高く多量元素と呼ばれこの6種類の元素を合計すると人体中の体内存在量の殆どを占める。
 次に多い元素は硫黄、カリウム、ナトリウム、塩素、マグネシウムで、体内存在量は0.05~0.25%を占め少量元素と呼ばれる。多量元素と少量元素を合わせた11元素を常量元素と呼び体内存在量の99.3%を占める。残りの0.7%を微量元素と言い微量ではあるが、生命機能を維持する上で、極めて重要な元素で鉄、亜鉛、ストロンチウム、マンガン、銅がこれに含まれる。

亜鉛の生体内分布

亜鉛は100種類以上の酵素に分布し組織の修復、骨の維持、生殖などに関与する。
また感覚、食欲、免疫機能など様々な機能が亜鉛に依存するといわれ蛋白質合成、ホルモン活性に不可欠であるのだが血液中の亜鉛濃度測定は①長期の経静脈高カロリー輸液実施時の亜鉛欠乏状態の把握、②腸性肢端皮膚炎の診断,治療効果の判定、③亜鉛欠乏症の診断,治療効果の判定に利用される。

疾患別血清亜鉛平均値は


“出典 半田憲誉  池田昌伸 亜鉛測定の有用性 医学検査Vol.59 No.3 2010”
1)基礎疾患を有すると血清亜鉛が低値になる
2)低アルブミン(低栄養)においては有意に低下する

回復例と非回復例における亜鉛とALBの推移を比較した場合



“出典 中島あつ子 矢沢淳子 ICU・NST 患者における血中亜鉛濃度の推移 医学検査Vol.61 No.1 2012“
1)血清亜鉛とアルブミンが正の相関を認める
2)回復例では血清亜鉛とアルブミンが上昇を認める

回復例と非回復例における亜鉛とTTRの推移は

出典 中島あつ子 矢沢淳子 ICU・NST 患者における血中亜鉛濃度の推移 医学検査Vol.61 No.1 2012”

1)血清亜鉛とプレアルブミンが正の相関を認める
2)回復例では血清亜鉛とプレアルブミンが上昇を認める


回復例と非回復例における亜鉛とCRPの推移は



“出典 中島あつ子 矢沢淳子 ICU・NST 患者における血中亜鉛濃度の推移 医学検査Vol.61 No.1 2012”
1)血清亜鉛とCRPが負の相関を認める
2)回復例では血清亜鉛の上昇とCRPの低下を認める

厚生労働省「障害老人日常生活自立度」 判定基準を基に比較した場合 

“出典 Ayello, E. A.,et al.:Nutritional aspects of wound healing. Home Healthcare nurse,17(11): 719-729, 1999

1)低栄養の高齢者は亜鉛欠乏状態であることが多い
2)寝たきり度が高いほど亜鉛が欠乏している
このため亜鉛投与が褥瘡管理において重要であることがわかる

褥瘡のある群と無い群に分けた場合


“出典 褥創と血中亜鉛濃度(岡田淳:1975)”
褥創患者はコントロール症例に比べ血清亜鉛は低値を示す

まとめ

栄養状態と血液検査、亜鉛測定の有用性に関して記載しました。
アルブミン値のみならず血清亜鉛濃度測定も採血で栄養状態をみるうえでは重要となってくることがお分かりいただけただろうか。

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