臨床検査値はその時々の患者の状態を良く反映し、多くの情報を得られるが、栄養状態だけでなく、他の病態、病状により変動します
臨床検査値の結果解釈をする上でのポイントは以下①~⑤の通りです
① 生理的変動要因
② 検査項目の持つ特性による変動要因
③ 患者の病態による変動要因
④ 検体採取方法や処理方法による変動要因
⑤ 測定方法による変動
体内の存在様式による変動も測定値に影響を及ぼします。
カルシウムを例にするならそもそもカルシウムは体内に存在する元素の一つで骨や歯の形成、筋肉・心臓の興奮、血液の凝固反応に関与する元素のひとつです
血液中のカルシウムは多すぎてもいけませんが少なすぎても体にはよくありません
低カルシウム血症(8.5㎎以下)
原因 悪性腫瘍や低マグネシウム血症、慢性腎不全、
症状
・神経、筋肉の興奮
・手足の先、口の周囲のしびれ手指が動かない(テタニー発作)
・精神神経症状
・消化器症状
・低血圧
・不整脈
高カルシウム血症(10.5㎎以上)
原因 ビタミンA・Dの過剰や、悪性腫瘍、原発性甲状腺機能亢進症等
症状
・脱水症状(腎臓の尿濃縮不全による)
・食欲不振 、嘔吐 便秘 、
・不整脈 、精神神経症状 、意識障害 、昏睡状態
見本 85歳 男性の採血データ
TP 4.8 g/dl
ALB 2.8 g/dl
Ca 8.6 mg/dL
Na 140 mEq/L
K 4.5 mEq/L
Cl 97 mEq/L
白血球 25.6×10^2/μL
Hb 10.7 g/dL
血小板 13.4×10^4/μL
* 個人情報は一切関係ありません適当に数字を入力しています
血中のCa値は同じでもALB値が異なると解釈が変わる血中カルシウム(イオン化カルシウム アルブミン結合型カルシウム)血清中のCaのうち約40%は蛋白(主にアルブミン)と結合、5〜15%はクエン酸、リン酸、炭酸と錯塩を形成し、50%がイオン化Caとして存在する。イオン化Caのみ生理活性があり検査では血清中の総Ca濃度が血清Ca濃度として測定される。
このため低アルブミン血症の際は補正式が必要
補正Ca値 =測定Ca値-ALB値+4
症例の採血データではALB 2.8 g/dl で
Ca 8.6 mg/dL 補正Ca値 =測定Ca値-ALB値+4 のため
補正Ca値 = 8.6 - 2.8 + 4 = 9.8 mg/dLとなる
癌患者には高Ca血症が起こることが多いが、同時に低アルブミン血症であることも多いのでCaの補正は重要です。一件基準範囲内を示す検査値であっても生体内の存在様式と生理活性を理解してデータを読むことが重要となります
補正した血清カルシウム値が12mg/dl位に上昇
・ 全身倦怠感や食欲不振が生じる
・ 高カルシウム血症が進むと腎尿細管での尿濃縮力が障害されて多尿となり、口渇と多飲が生る。
補正した血清カルシウム値が14~15mg/dlを超す、
・ 脱水の傾向が強まり、補液が十分でない場合、乏尿となり、急性腎不全を起こす。
・ 精神活動も低下し会話も円滑にできなくなり、混迷から 昏睡に陥る
このため病態を捉えてデータを解釈することが重要となります
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