ドレーン廃液でのアミラーゼ測定の役割

2017年8月19日土曜日

生化・免疫学検査

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ドレーン廃液のアミラーゼ値が高すぎる!

よくドレーン廃液のアミラーゼ値が高すぎで、何度もオーバーフローのエラーが出ることは無いだろうか?ドレーン廃液のアミラーゼ測定は術後出血など合併症の予防やモニタリングには欠かせないものである。

ドレーン廃液のアミラーゼ値測定の意義

術後出血は術後24時間以内に起こる早期出血と術後しばらく経ってから起こる晩期出血に分類され晩期出血は術後2週間程度経過してから起こることが多く肝臓・胆管・膵臓領域の術後に切離断端や吻合部の縫合不全部から漏出した消化液の作用や二次感染の影響や周囲組織や血管が破綻することで起こります。外科術後では腹腔(胸腔)内に数本のドレーンが留置されます。ドレーンは減圧、体内への漏出予防、貯留した血液の性状を観察するため等の役割があります。一般的に感染などを防ぐための予防的ドレナージ、常を発見するための情報的ドレナージが行われ膵液漏出の確認や縫合不全の早期発見・把握が主な役割になります。
正常なドレーン排液は、100ml/日未満で、薄い赤色から時間経過とともに淡黄色透明に変化します。異常がなければ3~4日目に抜去します。

その際に膵液の漏出がないこと、縫合不全がないこと、熱型、白血球値などが抜去基準となります

ドレーン排液は術後早期に膵液が混じることによって特徴的なワイン色を呈しますが感染が合併した場合膿汁様排液となります。

膵液瘻とは

ここで問題となってくる膵液瘻ですが膵臓の手術や胃など膵臓周囲の臓器の手術の際に膵臓の損傷部から膵液が持続的に周囲に漏れてしまう病態とされています。そもそも膵液は消化酵素の一種で強い消化作用があり膵臓周囲の臓器を溶かす恐れがあり腹腔内膿瘍など合併症を引き起こすこともあますし血管壁の破綻により仮性動脈瘤が形成され破裂し出血する事で出血性ショックなど重篤な症状も引き起こします。このため治療では漏れた膵液をドレーンチューブで回収する必要があります。

2005年のSurgeryによる膵液瘻に基準

2005年のSurgeryによると膵癌の場合は術後3日以降にドレーン排液中のアミラーゼの値が血清アミラーゼ値の3倍以上を示す場合を膵液瘻という(Surgery 138:8-13,2005)と定義されています。ざっくり言うなら測定値のオーバーフローを起こす訳だからそれだけ膵液が漏れていると言うことです。アミラーゼを作るする臓器に外力が加わるからそれだけ高くなりますよね。

アミラーゼ高への対応

この生化学担当技師泣かせのドレーン廃液のアミラーゼ測定ですが、オーバーフロー検体への対応としては測定値が測定試薬の直線性の範囲内に収まるまで希釈再検するしかありません。つまり試薬の直線性は把握しておきましょう。また、自施設は用手法による希釈のために希釈誤差も有りうると言うことで二段階の濃度の試料を作製してその平均値を採用しております。1日に何件かあったりするので計算用のエクセルシートとか作っておくと楽ですよ。


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