病理業務では検体取り違えはあってはならないことです。間違うことを前提にリカバリー方法を検討するのも如何なものかと思いますがしないよりはましでしょう。例えば国立がんセンターで実際に起こった事例で検体を取り違えたことによって肺癌ではない患者の肺の一部が切除されてしまった事例では別の肺がん患者の標本に、誤ってこの患者の名前が書かれたラベルを貼ったことで肺がんという診断が下り、切除するに至ったという経緯です。検体取り違えはいつどこででも起こり得ることだということがいえます。
仕事に対する慣れによる油断、確認不足、思い込み、ストレス、経験不足などの人的要因や煩雑な手作業の部分が多いことから受付システム、マンパワーの不足、ダブルチェックの必要性、時間的制約などのシステム的要因などに起因します。
間違いは起こりえないことが前提ですが、万が一発生した場合は検体取り違え時の鑑別方法をある程度把握しておき検証しておくこともマネジメント上必要となってきます。検体取り違えが起こってしまった場合に、それらを鑑別する方法はないか調べてみたところ、これら3つの方法がありました。1)血液型抗体による免疫染色、2)X,Y 染色体Probeを用いたFISH法、3)縦列型反復配列解析を用いた個人識別解析法が有用であるとの報告があります。2)X,Y染色体Probeを用いたFISH法はFISH法の機械が必要で性別が同じ場合は鑑別不能です。3)縦列型反復配列解析を用いた個人識別解析法は法医学領域でのヒト個人識別、親子鑑定で用いられる方法で一般病院では難しいのが現状です。
1)血液型抗体による免疫染色は血液型検査の抗体が使用でき簡便ですがA型40%、O型30%、B型20%、AB型10%の割合で存在するため血液型が同じ場合は鑑別不能です。自身の経験上検体取り違えはありませんが、コンタミネーションの証明の際に有用でありましたので検査室で血液型検査を行っていれば一時抗体の入手は容易であることから検討する価値はあります。
輸血用抗A抗体、抗B抗体はそのままだと高濃度であるため200倍から300倍に希釈して使用しました。温浴や酵素などの賦活は不要です。この方法で用手法や、自動免疫装置(ライカボンドマックス)で運用しておりました。染色標本の評価は標本中の赤血球や血管内皮細胞が陽性に染まってきます。
注意すべき点として用手法の場合は特に抗マウスなどの血液型抗体の種類は確認しておいた方がいいと思います。それと血液型抗体はA抗体は青、抗B抗体は黄色に色づけされていますが希釈して使用していた事もありますが組織切片への影響はないです。
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