糞線虫はベトナムから帰還したフランス人兵士の間で見られた難治性下痢患者から発見した。そもそも糞線虫は熱帯亜熱帯域に広く分布しており
日本においでは沖縄県、鹿児島県奄美地方が流行地として知られ本虫の保有率は5~10%であります。糞線虫保有者のなかに高率でHTLV-1 (成人T細胞性白血病ウイルス) との
重複感染がみられます
【生態】
糞線虫は土壌から人に経皮感染しフィラリア型幼虫が
血管やリンパ管に入り心臓を経由して肺に達し肺胞を脱出して気管を遡り嚥下され十二指腸に至り成虫となり産卵を開始し、卵は腸を下る間に孵化してラブジチス型幼虫となり肛門より排泄され寄生世代より自由世代に移行します。
腸をくだるラブジチス型幼虫の一部は通下中にフィラリア型幼虫に変わる事があり腸粘膜を突き抜けて静脈系侵入する自家感染を起こします。自家感染により長年にわたり宿主であるヒトの体内で寄生状態を維持します。
【形態学的特徴】
糞線虫で一般の便検査で認められるのはラブジチス型が多いとされその形態の特徴は体長200~300μmで口腔は短い、一方フィラリア型幼虫は体長0.6 mmで長い食道をもち尾端がV字型に切れ込んでいるのが最大の特徴です
【検査・診断】
糞線虫の確実な診断は虫体を証明することである。
糞便を検体とした検査法としては普通寒天平板培地法が
最も検出率が高いとされていますが、短時間で簡便に実施できることから直接塗抹法が
よく利用されていますが検体量が微量な場合は検出効果は高くないです。
【鑑別】
便検体において糞線虫では活動的な幼虫を,他では虫卵を検出することが多いため便検体にて幼虫を認めた場合はまず糞線虫を想起すべきです。
ラブジチス型幼虫を他の人体寄生虫との鑑別点は口腔の構造がポイントとなってくる。
口腔が長い場合は糞線虫属でないと判断され、糞線虫のフィラリア型幼虫と他寄生虫のフィラリア型幼虫との鑑別は食道が長い事、尾端に切れ込みがある事で区別できます。
【症状】
少数感染のうちは無症状だが感染数が多くなると下痢, 軟便, 腹痛, 腹鳴などの腹部症状を呈します。また基礎疾患のにより免疫能が低下した場合やその治療のため免疫抑制剤などを使用した場合に過剰感染や播種性糞線虫症をおこすと言われています。過剰感染症候群においては便・十二指腸内容物・脳脊髄液・尿・胸・腹水から本虫が発見されることがあります。
また自家感染の際に腸管から大腸菌やクレブシエラなどのグラム陰性菌が血中に持ち込まれ髄膜炎、肺炎、敗血症を起こすため糞線虫に対する治療だけでなく,グラム陰性桿菌に対する治療が必要になるため速やかな検査結果報告が必要になってきます。
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