免疫学的分析における非特異反応の原因と対応

2017年8月29日火曜日

血液学的検査 生化・免疫学検査 病理・細胞診 輸血検査

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免疫学的測定法はHCV測定を例にとると、磁性粒子に結合したHCV関連タンパク質と患者検体中の抗体が反応する(第一反応)。反応液の除去後に結合粒子の洗浄が行われた後に酵素標識抗体と結合し発光させて測光するという手順を踏む。この免疫学的測定の際に生体中の何らかの因子によって本来起こりうるべきでない反応により偽陽性や偽陰性が生じてしまうことを非特異反応という。免疫学的測定における非特異反応の発生率は日本臨床検査技師会免疫血清研究班による調査によると感染症領域において自動分析で25.7%、凝集法で18.6%、簡易検査法で8.6%にみられHCV陽性検体において1.9-2.4%の割合であったとの報告があります。測定試薬に由来する場合や検体中の物質に起因する場合などがあり原因は下記表に示す

※非特異反応の原因

血清分離不良

マイクロフィブリン

異好抗体

抗マウス抗体HAMA Human antimouse antibody

抗ウサギ抗体HARA Human antirabbit antibody

抗ヤギ抗体HAGA Human antigoat antibody

抗ウシアルブミン抗体HABA: Human Anti-bovine serum albumin antibody

生体成分

リウマトイド因子

クリオグロブリン

交叉反応

類似物質

試薬

固相粒子・固相感作抗体成分

 

非特異反応の解析には添加・吸収試験、ゲル濾過法、免疫電気泳動、ウェスタンブロット、還元剤を用いる方法などがある。リウマトイド因子には添加・吸収試験やゲル濾過法、異好抗体に対しては検体中の異好抗体を吸収材で除去しその前後値を比較するなど症状に併せて解析することが大事です。また原因物質が継時的に変化することで再採血にて非特異反応が再現しないことがあるので注意が必要である。

※偽陽性の確認方法とその特徴

確認方法

特徴

希釈直線性試験

希釈直線性が良好な項目のみ対応が可能

抗体検査の殆どは定量でないので評価できない

定量可能な試薬でも直線性を示さない抗体が存在する

添加材による中和試験

抗体検査試験においてはメーカーが推奨するものは無い

感染初期や抗原変異時に出現する特殊なものは中和できない可能性がある

異なる試薬による測定

関連マーカーの測定

再測定は日常試薬と同等の感度を有する試薬で行う

患者の臨床的背景

他院のデータなどを含めた患者背景の確認

 

異好抗体は種に関係なく産生される抗体で動物の免疫グロブリンを認識するヒト由来の抗体でフォルスマン抗体、HAMAHARAHAGAなどがあります。異好抗体除去キット「異好抗体ブロッキングチューブ」が販売されていますので異好抗体が疑われた場合は検体を前処理して再検査し比較すると良いでしょう。

HCV抗体中・低力価陽性例においてHCV-RNA陰性例がある既往感染・初期感染・交差反応・非特異反応がその原因となる事がありH C V 抗 体 測 定 試 薬 の 一 致 率を検討した論文では判定不一致を示した検体の約半数でRIBAにてHCV抗体を認めなくまたほとんどの例でHCVRNAを認めなく反応性の弱い場合は偽陽性の可能性があり偽陽性例においてコア抗原陰性で、RIBAテストではc100などと弱い反応を示しGPT正常で抗体価が10未満の弱陽性例は、全例においてHCV-RNAが陰性であったと報告があります。偽陽性が疑われた場合は、HCV抗体のみならず、HCV-RNAなどのマーカーや 他の検査結果臨床経過を踏まえ総合的に判断することが重要であります

また発見する契機の多くは関連する他の検査結果との解離(他法と解離)、臨床側からの指摘など検査室側からの発見は非常に難しい事も少なくない。

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