蛋白分画でのキャピラリー電気泳動法とセルロースアセテート膜電気泳動法の違いと注意点

2021年1月1日金曜日

一般検査 血液学的検査 検査システム 生化・免疫学検査

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血清蛋白分画解析の意義


血清中には、アルブミンや免疫グロブリンをはじめ、100種類以上の蛋白が存在しており、病的状態により蛋白に異常(異常症や欠損症など)が生じると、各種蛋白濃度のバランスが崩れ、その疾患に特有の濃度異常が生じます。
血清蛋白分画検査は、少ない検体量で容易に、そして安価に測定ができ、蛋白成分の質的・量的変動など多様な情報が得られることから、病態把握や治療効果の判定に有用な検査とさ
れます。本検査で多発性骨髄腫やネフローゼ症候群、急性・慢性炎症、膠原病に等の診断補助が可能となっています

血清蛋白分画解析の手法

血清蛋白分画解析の手法としてセルトスアセテート膜電気泳動とキャピラリー電気泳動がありセルトスアセテート膜電気泳動が長年使用しているため親しみがあるかもしれません。

セルトスアセテート膜電気泳動


セルトスアセテート膜電気泳動はセルロースアセテート膜を支持体とした電気泳動で易動度の高い順に陽極側からアルブミン、α1-グロブリン、α2-グロブリン、β-グロブリンと、γ-グロブリンに分画します。これらの蛋白質の構成比から様々な病態の把握を行います。

セルトスアセテート膜電気泳動基準値


・A/G比:1.55~2.55%
・Alb:60.8~71.8%
・α1グロブリン:1.7~2.9%
・α2グロブリン:5.7~9.5%
・βグロブリン:7.2~11.1%
・γグロブリン:10.2~20.4%



歴史的背景として1937年(昭和12年)Tiselius.Aが電気泳動装置を発表、その20年後の1957年(昭和32年)にはKohn.Jがセルロース・アセテート膜電気泳動法を発表し、現在の血清蛋白分画分析の基礎を築きました。1978年(昭和53年)には世界初の全自動電気泳動装置(AES)が日本で開発され、その後はITの発展とともに多くの点が改善され、現在に至っています。 広島市医師会だより(第525号付録)より引用
セルロースアセテート膜電気泳動法は,血清蛋白の分画のほかにリポ蛋白分画、LDH,ALP,アミラーゼなどの各種アイソザイムの分析およびヘモグロビン4)の分析などにも有用な手段となっています.最近ではキャピラリー電気泳動法でのタンパク分画測定が主流となってきております

キャピラリー電気泳動の原理


キャピラリー電気泳動法(CE)はセルロースアセテート膜電気泳動法(CAEP)のような固体の支持体を用いず、キャピラリーと呼ばれる管(内径20~100nmの溶融シリカキャピラリー管内)にバッファーを充填し電気泳動を行うもので、優れた分離能をもつことにより高感度・高精度に蛋白成分を分離し測定することができるため、血清検体では従来の5分画(アルブミン、α1、α2、β、γグロブリン)から、βグロブリン領域をさらにβ1、β2に分離した6分画での報告が可能となりました。β位のM蛋白はβ2領域にピークの出現が多いとされていますが、本検査はβ位のM蛋白検出感度がセルロースアセテート膜電気泳動法の2倍以上であり、β領域の2分画化はM蛋白血症の早期発見の可能性が高まるだけでなく、β位以外の分画(γ位、まれにα2位)に存在する微小なM蛋白も検出可能です。

キャピラリー電気泳動法の基準値

キャピラリー電気泳動ではセルロースアセテート膜法と分画数が異なるため基準値が変わってきます



・A/G:1.3~1.9
・Alb:55.8~66.1(%)
・α1グロブリン:2.9~4.9(%)
・α2グロブリン:7.1~11.8(%)
・β1グロブリン:4.7~7.2(%)
・β2グロブリン:3.2~6.5(%)
・γグロブリン:11.1~18.8(%)

タンパク分画でのキャピラリー電気泳動法とセルロースアセテート膜電気泳動法の方法間の違い

タンパク分画でのキャピラリー電気泳動法とセルロースアセテート膜電気泳動法の方法間の違いですが、キャピラリー電気泳動法ではβ位が二峰性になります。β1、β2に分かれます。
・β1:トランスフェリン
・β2:C3,C4
が主体になります。
キャピラリー電気泳動法の注意点としてキャピラリー電気泳動法は造影剤の影響を受けやすくなります。イオヘキソール、イオメプロールなどの造影剤を使用しているか確認しておく必要があります。

保険点数に関しては測定原理の変更による保険点数の変更はありませんので従来どおりの請求で問題はありません。システム側の設定変更は必須となります。分画数が5分画から6分画へ変更されるため、検査システムと電子カルテ側のマスタ設定の変更をしておく必要があります。

さいごに

国家試験では5つの分画でしたが今後は6分画での結果報告が主流となってきます。測定原理のみならず基準値、システム設定などの再度確認を行っておく必要があります

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